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驚きのマテリアル 超・薄・微 一億人の化学
/大日本図書


メゾスコピック系の物理
/丸善

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Quantum Dot Devices and Computing/SPIE


Quantum Dot Heterostructures
/John Wiley & Sons



 

  
イントロダクション
量子ドットの基礎
量子ドット作成 - トップダウンとボトムアップのアプローチ
応用1 量子ドットレーザー
応用2 単一電子トランジスタ
応用3 量子セルオートマトンによるコンピューティング
応用4 フォトルミネッセンスを利用したバーコード

リンク集

 
■量子ドット
 −応用例1 量子ドットレーザー


量子ドットレーザーの原理、構造について


 量子ドットの応用例には様々なタイプのものがあるが、最も代表的なのが量子ドットの光の性質を利用した「量子ドットレーザー(QDL;quantum dot laser)」といえるだろう。現在の短波長青色レーザーには、活性層の厚さが10nm程度の「量子井戸レーザー(QWL;quantum well laser)」が使われているが、エネルギー効率、温度安定性の面でも、量子ドットレーザーの方が理論上、優れていると考えれている。


量子ドットレーザーの構造・発光の原理


 電子と正孔が再結合して光子を放出することでLEDやレーザーは光ることが出来るが、そのときに効率よく再結合が出来るかが、高性能なレーザーを実現する鍵となる。

 単純なホモ接合構造のレーザーでは、電子と正孔が拡散してしまい出会う確率が低いために、再結合の効率が低かった。そのため、高輝度で低消費電力を実現することが難しかった。そこで量子井戸レーザーでは、活性層と呼ばれる部分に電子と正孔が集まってくるような仕掛けを作り、効率よく再結合が行えるように改良された。この活性層にあたるのが、厚さ10nm程度の量子井戸である。

 量子ドットレーザーでは活性層に、量子ドットが縦横に並んだ量子ドットアレイ(quantum dot array)を用いている。量子ドットでは空間的に同じ場所に電子と正孔が閉じ込められるため、一対の正孔と電子が効率よく再結合を行うことが出来る。なお、一対の電子と正孔の再結合では光子が一つしか発生しないため、活性層では量子ドットがたくさん並んだアレイ構造になっている。


デバイス実現までの課題

 量子ドットレーザーは研究室の中では室温発振するレベルにまで至っているが、まだ実用化には至っていない。デバイスとして利用するためには、アレイのそれぞれの量子ドットの大きさが均一でなければならないが、現時点では効率よくこれを実現する方法がないためだ。

 量子ドットのサイズが重要になってくるのは、閉じ込め効果でサイズの違いが放出される光子のエネルギーも左右してしまうためだ。また、量子ドットの密度も重要になってくる。

 前のページで紹介したように、量子ドットの作成法にはボトムアップとトップダウンの二つがあるが、コストなどの考慮から、SKモードなどの自己形成を利用した量子ドットレーザーの研究開発がしきりに行われている。


量子ドットレーザーならではの利用方法

 光ファイバーでデータを送る光通信は銅線で電子を送る通信方法よりもはるかに速いが、光ファイバーで運んだ光の信号を電気信号に変換する必要があり、この変換速度が問題となる。変換速度が遅ければ、光ファイバーの通信速度はまったくいかされない。

 量子ドットレーザーを通信用光源にもちいれば、データ信号を光にのせる外部変調器が不要となるために、こういった問題に大きな影響を与えると考えられる。いわゆるオプトエレクトロニクスでの活躍が期待されている。

 また、量子ドットは光子を一つずつ放出することができることから、それを検出する機器が実現すれば量子暗号通信などの分野でも活躍すると考えられている。

 量子ドットレーザーは応答性がよいことなどから、光に必要な光変調器、光中継器、波長変換素子に利用することが可能になると考えられている。




量子ドット作成 - トップダウンとボトムアップのアプローチ 応用2 単一電子トランジスタ