■ホログラフィックメモリ
- 半導体・磁気ディスクの裏に隠れてきた歴史
実はホログラフィックメモリの研究は30年以上も昔から行われてきた。1960年代初期にPolaroid社の科学者Pieter
J. van Heerdenによって立体ホログラム記録が提案されて以来、ホログラフィックメモリは、読み出しの速さや容量の大きさなど、他のメディアとは比較にならないポテンシャルが知られてきた。
そのため多くの研究がなされ、70年代にはホログラフィックメモリのプロトタイプができあがっていたが、当時急速に成長してきた半導体メモリやハードディスクにすっかり出番を奪われてしまう結果となってしまった。
とくにハードディスクの成長の方は目覚ましく、ハードディスクの容量は年々順調に増えている。それどころか成長の勢いが増しているのだ。例えば、80年代では容量の伸び率が一年で約2,30パーセントだったのに対し、90年代に入って60パーセントになった。さらに2000年になってからもこの伸び率が増しているのだ。有名なムーアの法則にしたがって成長するコンピュータの頭脳、CPUの性能よりも大きな伸びを示している(ムーアの法則は18〜24カ月で性能が2倍になるとしている)。
ところが輝かしい成長を続けた磁気ディスクも、理論的な理由から多くの科学者、技術者たちはその成長に近々、大きな陰りがやってくると考えているのだ。それは「熱ゆらぎ」と呼ばれる問題だ(「ハードディスクとその将来」を参考)。
そこで改めてホログラフィックメモリの可能性が注目されているのだ。特に10年前当たりからのホログラフィックメモリの研究が大々的にはじまり、アメリカ国防省
(DARPA)によるプロジェクトや、情報通信の大手企業のIBMやルーセント社などが研究に加わった。
それ以来いくつもの課題を克服しながら、DARPAの二つのプロジェクト、PRISM(the
PhotoRefractive Information
Storage Materials
)とHDSS(the Holographic
Data Storage System)が終了に近づいた90年代の末には、多くのブレイクスルーが発表された。ページ単位で一度にデータ読み出しが可能なこともデモンストレーションされた。これによってホログラフィックメモリはかなり現実的なものとなった。
そして2001年には、ルーセントが実用レベルが近づいたとして、このホログラフィック研究部門を切り離して、独自のベンチャー企業InPhase Technologiesを設立した。国内でもオプトウェアが市場導入に向けて、多くの機関から資金援助を受けながら研究開発を行っている。
では次に具体的に、ホログラフィックメモリの仕組み、構成を見てみよう。
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