「道具」としての自己組織化
- 超分子構造、…そして発現する機能へ - 自己組織化を導き利用する

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これまで説明してきたのは、おもに自己組織化がどのように起こるかということでした。しかし、自己組織化によってできあがった組成体には、特殊な性質や機能が現れることは珍しくありません。
ここでは、自己組織化を積極的に利用して、さまざまなデバイスをつくることを考えてみましょう。人工酵素、光合成、分子エレクトロニクスなど、その用途は実に幅広いものです。
・人工酵素
生体内の酵素は、これまで私たちがつくってきた触媒と比べて、選択性がはるかに高く、また体温、1気圧という非常に温和な環境でその機能を発揮することができます。
酵素のこういった性質は長い間、手の届かないものと思われていましたが、超分子化学など分子レベルでの解明が進むにつれて、じょじょにその仕組みが分かってきました。シクロデキシトリンをはじめ、現在では金属をとりこんだポルフィリンなどさまざまな人工酵素の研究開発が行われています。
酵素と同じ機能をする低分子モデルをつくり、酵素が機能できない極端なpHの環境でも機能できるような人工酵素の開発が期待されています。
・自己組織化>自己複製
もっとも生物らしい性質に、自らを分子認識して「自己複製」するというものがあります。DNAの塩基などがそうですが、現在では人工的にも自己複製を可能な分子が合成されています。また、金属イオンなどの鋳型分子を認識して増殖する分子なども発見されています。ドレクスラー博士の提唱した自己複製するナノロボットアームには、まだまだ至りませんが、いくつか具体例を挙げてみましょう。
・鋳型合成
カテナン
金属イオンのまわりの配位結合を利用して、鋳型合成をします。これによって、知恵の輪のようにリングが絡まった構造ができあがります。そのため化学結合をしていなくても、この二つのリング状分子をはずすことはできません。ここに図はありませんな、オリンピックの五輪の形をした5-カテナンも合成されています。
ロタキサン(ニュースで解説)
軸にリングがはまっていて、リングは軸に沿って移動することができますが、軸の末端の分子がストッパーの役割をするのでリング状分子が抜けることはありません。カテナンと同じく、鋳型合成によって高収率で得られるようになりました。ちなみに、このリングの位置には、分子間力によって二つの安定な状態があり、分子メモリとして利用できます。実際、特許取得したHP(ヒューレット・パッカード)社の分子コンピュータはこのロタキシンを利用したものです。
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中性状態では、リングはよりドナー性の大きいベンジジン上にいます。ベンジジンを酸化するとドナー性が下がるとともに静電荷間の反発によってリングはビフェニ−ル上に移動します。酸化還元によってリングが駅の間を往復するシャトルのような動きをし、分子シャトルと呼ばれています。 |
・自己複製
生命以外で自己を分子認識して複製をする系が発見された最初の例は、DNAオリゴマーです。これは天然の分子ですが、自己複製をする人工的な分子も合成されています。
・人工光合成
別の解体真書で詳しく解説予定
・分子フォトエレクトロニクス
別の解体真書で詳しく解説予定
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