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ヤリーヴ光エレクトロニクス 基礎編
/ 丸善


ヤリーヴ 光エレクトロニクス 展開編
/ 丸善



 

  
イントロダクション
レーザー誕生の歴史
レーザーの原理1:普通の光との違いは?
レーザーの原理2:反転分布
レーザーの原理3:レーザー発振
半導体レーザー
関連リンク集

 
レーザー
 - レーザーの原理1:レーザーの光と普通の光はどう違う?

普通の光との違いは?コヒーレントとは何?

 レーザーの光はロウソクや蛍光灯の光と違うのだろうか?確かにレーザーの光は、単色性に優れていたり、電球の光のように四方八方に散乱せず指向性に優れていたりと、他の光と比べても明らかな違いがある。

 しかしレーザーの光の最大の特徴は、「
コヒーレント(coherent)」(可干渉性)にあるといえる。ではコヒーレントな光とはどのようなものだろう?まずは視覚化しやすい水の波について考えてみよう。

 洗面器の中に水を浅く入れ、指で水面をつついて波を2回起こした場合について考えてみよう。1回目の波が洗面器の壁に反射して2回目の波と重なったとき、どのようなことが起こるだろうか?二つの波は何事もなかったように通りぬけるかもしれないし、ぶつかって完全に打ち消しあってしまうかもしれない。このどちらが起こるかは波の位相にかかわっているはずだ。

 だとすれば、指で波をランダムに起こしつづければ、平均して波は打ち消されてしまうだろう。一方、位相が合うように波を起こしつづければ、波はだんだんと大きなものとなって洗面器から跳ね出てしまうかもしれない。これがコヒーレントな波といえる。電球の光などはランダムな水波で、レーザーの光は位相の合った水波という関係がちょうど成り立っているといえそうだ。


レーザーの条件1: 誘導放射

 では、どうすればコヒーレントな光をえることができるだろうか?原子や分子の内部で起こっていることを考えてみよう。


 熱や光など何らかの拍子で、原子や分子でエネルギーの低い軌道にあった電子がエネルギーの高い軌道へ励起される(excited)ことがある。(図1)その電子が再びエネルギーの低い軌道に下りてくる(ホールと再結合する)場合、その差分のエネルギーは光として放出される。(図2)

 普通の場合、励起した原子や分子によって発せられる光は、いろいろな位相や方向を持っているのが普通だ。ところがある条件下では、一つの電子が再結合したときの光が引き金となって、別の電子の再結合が後に続くことがある(下図)。これにより、2番目の再結合は、一つ目の光と正確に等しい位相を持った同一波長の光が発生する。この現象を「
誘導放射」と呼んでいる。この誘導放射が何度も続けば、位相の整った強い光をえることができる。


 ただしこの説明だけでは、レーザーの原理の半分も説明できていない。そもそも、誘導放射というのは自然には起こりえない現象なのだ。そこで、誘導放射を可能にする条件を整えてやらなければいけない。そのことについては、次のページで見てみよう。



レーザー誕生の歴史 レーザーの原理2:反転分布