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「暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで」 / 新潮社


量子論の宿題は解けるか
/ 講談社ブルーバックス

The Physics of Quantum Information: Quantum Cryptography, Quantum Teleportation, Quantum Computation
/Springer Verlag




 
       最終更新日 2002/08/29
  
イントロダクション
量子テレポーテーションに関する歴史
より安全な暗号を目指して
量子テレポーテーションの基礎
量子テレポーテーションの流れ(理論編)
量子テレポーテーションの流れ(実験編)
今後の展望&リンク集


 
■量子テレポーテーション、量子暗号
 − 量子テレポーテーションの流れ(実験編)

 前のページで量子テレポーテーションの流れについてモデル的なものを見た。では、具体的にどのような実験で量子テレポーテーションが可能なのだろうか?

 先にも述べたが、量子テレポーテーションの媒体に用いるのは光子の偏光でも電子のスピンでも可能であるが、光子は外部からピュアな状態を保ったまま遠くに送ることができるので、量子通信には光子がベストだと考えられている。

 ここでは、光子を用いた量子テレポーテーションの実験を見てみることにしよう。これは1997年にオーストリアのインスンブルック大学で行われた実験である(ただし、下図は簡略化している)。


光子を用いた量子テレポーテーションの実験装置

 まずは、EPR光源で絡み合いにある二つの光子を発生させる。この具体的な方法には、「量子テレポーテーションの基礎知識」のページで紹介した紫外レーザーを非線型結晶に照射するというものがある。このとき発生した二つ光子のうち、光子Bはアリスの方へ、光子Cはボブのほうへ進んで行くように鏡などをセットする。

 もう一方の光源では、アリスがボブに送信したい光子Aを発生させる。アリスの光源で発生した光子ははじめ絡み合いの状態にあるが、すぐにフィルタで一定の偏向角のものだけを選ぶので、結局、絡み合いの状態は解消され単独の光子Aとなる。

 次に光子Aと光子Bを絡み合いの状態にするために、アリスが観測機1,2を使って二つの光子を同時に観測する必要がある。このベル測定は「量子テレポーテーションの基礎知識」のページで紹介したように、光子A、Bそれぞれの偏光を測定するのではなく、二つの粒子の相対的な関係(4つベル状態のうちのどれか)を測定するというものだった。

 アリスがベル測定を行うと、送信したかった光子Aの偏向角がボブの粒子Cにコピーされるというわけだ。ただしボブが光子Cの情報を得るためには、古典的な通信を使ってアリスからベル測定の結果を聞かなくてはならない。



量子テレポーテーションの流れ(理論編) 今後の展望&リンク集