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分子ナノテクノロジー 分子の能力をデバイス開発に活かす
/ 化学同人


Chemistry of Nanomolecular Systems: Towards the Realization of Molecular Devices / Springer Verlag


Molucular Electronics II
/NewYork Academy of Science


Future Trends in Microelectronics: The Nano Millennium
/Jhon Wiely&Sons

     最終更新日;2002/10/16
 

  
イントロダクション
なぜ分子エレクトロニクスか?
単一分子素子とは何か?
さまざまな単一分子素子
集積化を目指して
リンク集

 
■分子エレクトロニクス
 - さまざまな単一分子素子

 前のページでアビラムとラトナーの提案した分子トランジスタを紹介したが、この他にはどんな分子によってどんな素子が実現しているのだろうか?そこでこのページは、分子素子で代表的なものをいくつか紹介する。どれも分子の特徴を生かしたものだということを感じて欲しい。


●電場によってひねりを加える 分子スイッチ その1

 下図のように、3つのベンゼン環がメチルでつながれ、そのひとつにニトロ基(NO2)とアミノ基(NH2)が付いた分子がある。この分子はスイッチング素子として機能することが可能なのだが、それはこの分子のどういった性質のおかげなのだろうか?


 ベンゼン上では環にそって比較的自由に動ける電子が分布している。この電子は「π電子」と呼ばれ、複数のベンゼン環にまたがって移動することができる。つまりこの分子は電気を通す。(π電子共役系については「導電性高分子」などを参照。)ところが、アミノ基とニトロ基はそれぞれプラス、マイナスの性質を持っているため、この電圧を加えて電界が生じると図のように分子がねじれた構造になる。こうすると分子全体のπ共役性が失われ、分子は電流を通さなくなる。

 このように外部からの印加によって分子にひねりを加えることで、スイッチのオンオフを行っているというわけだ。これによってこの分子はスイッチング素子として機能することが出来る。分子を操作プローブ顕微鏡にはさんで電圧・電流の関係を調べるという方法で、すでにこの性質は実験的に確かめられている。


●シャトルを移動 分子スイッチ その2

 記憶素子としての条件を満たすためには、分子にはどのような性質が要求されるだろうか?0と1というデジタル情報を保持するために安定な状態が二つ(以上)あり、しかもその状態の間を比較的容易に行き来できる必要がある。さて、この条件を満たす分子にはどんなものがあるだろうか?


 上図のようにバーベルの軸にリングが挟まったような分子を総称して「
ロタキサン」と呼んでいるが、この分子はリングが二つの安定な位置に行ったり来たりすることで分子の軸方向の導電性が変化する。したがって二つの準安定状態を0と1に対応させ、導電性を検出すれば、1bitの記憶素子として利用することができる。例えば、この分子を使った分子メモリとして、2002年にヒューレット・パッカード社が64bitメモリのデモンストレーションに成功している。(詳しくは「HP社の示した分子コンピュータのロードマップ」を参照。)


●金属にも半導体にも 分子ワイヤ

  電子回路を実現するためには、スイッチング素子の他にどのようなものが必要となるだろうか?記憶素子やダイオードも単独に存在していては機能しない。そのため複数の素子を繋いでやるワイヤ(配線)が必要となる。この分子ワイヤとして注目されている素材が「
カーボンナノチューブ(CNT)」だ。(「カーボンナノチューブ」のページを参照。)


カーボンナノチューブをチャンネルに利用したCNT FET(Carbon NanoTube field Effect Transistor)。実際は、CNTの直径が数nmであるのに対し、ソースやドレインの幅は数十nm〜100nm程度なので、この図よりも大小差が顕著になっている。FETの動作原理については「トランジスタ」のページを参照。

 まず、文字通りCNTのワイヤ幅は数m程度で、現在(そして将来)の半導体微細加工技術がとても及ばない領域にある。この太さゆえにCNTは典型的な量子細線と見なせ、直径やカイラリティーをかえることで半導体や金属といった導電性が変化することが分かっている。ということは、直径やカイラリティーの違うCNTどうしをくっつけてやれば、ダイオードなどを作ることも可能だ。また、CNTをチャンネルに使った電界効果トランジスタも盛んに研究されている。極端な話、すべて炭素原子の分子素子というのも可能なのだ。



単一分子素子とは何か? 集積化を目指して