この「ナノエレクトロニクス」のホームページは、現在、サイエンス・グラフィックス(株)が管理しています。すべてのお問合せはこちらにお願いします。また、このホームページは2003年までのもので、現在は内容的に古くなっている可能性がありますが、あらかじめご了承下さい。

ナノテクノロジーの入門サイト。CGを駆使して解説。書籍紹介、R&Dリンク集など。





磁気抵抗ヘッドとスピンバルブヘッド―基礎と応用
/丸善

no image
マリンソン磁気記録の基礎/丸善



 

  
イントロダクション
HDDの構成
読み書きの原理
ハードディスクの課題と今後&リンク集

 
ハードディスクとその将来


ハードディスクのヘッドの構造

 このページでは、ハードディスクのデータの読み書きがどのような原理で行なわれているかについて見てみよう。とくに注目しなくてはいけないのは、ヘッドと磁気フィルムとの間で何が行なわれているかということだ。

 小学校か中学校のときに、磁石とコイルを用いて電磁誘導の実験をしたことがあると思うが、ハードディスクの基本的な原理もこれと共通していると思ってよい。



書き込みの原理


ハードディスク書き込みの原理

 上図は磁気ディスクにデータを書き込むときの様子をモデル化して示したものだ。一連の書き込み作業は大まかにいって次のような流れになっている。

 電気信号 > 電流 > 磁気信号 > 磁石の向き

 まず、コンピュータが処理している"0/1"の電気信号を電流としてコイルに送り、リング型の磁気ヘッドを磁石にする。この磁気ヘッドの空隙から磁場が漏れ出すので、この磁気信号によって、磁気ディスク上の小さな磁石にN極とS極の向きを記録することができる。この過程で、書き込み用の信号電流とディスクの動くタイミングとはうまくシンクロされている。


 では、"0/1"の情報は磁気ディスク表面にどのようなルールで書き込まれていくのだろうか?一番簡単な例で考えてみよう。

 "1"を書き込むときはコイルに流す電流の向きを変え、"0"を書き込むのは電流の向きをそのままにしておくことにする。すると、プラスに電流の向きが変わるときに磁気ディスクに正(N)の極が書き込まれ、マイナスに電流の向きが変わるときに磁気ディスクに負(S)の極が書き込まれることになる。

 磁気ディスク側の視点から考えれば、磁気の向きが変わる領域には"1"の情報が蓄えられ、"1"と"1"の間、つまり磁気の向きが変わらない領域では"0"が蓄えられているということになる。

 いったんディスク表面に極の方向が書き込まれると、新たに書き込みが行なわれない限り、その方向は保持される。



読み出しの原理


ハードディスクの読み出しの原理

 記録データは"GMR(Giant Magneto-Resistance)ヘッド"とよばれるもので検出される。MR(Magneto-Resistance)は磁場の影響を受けると電気抵抗が変化する性質のことだ。GMRヘッドの詳細については、「スピントロニクス/ハードディスクの成長を支えたGMR素子」でアニメーションつきで解説している。

 したがってGMRヘッドの性質を利用すれば、ディスク表面の磁場の向きを電気抵抗の変化として検出することができる。つまり、あらかじめGMRヘッドに電流を流しておけば、ディスク表面の磁場による電気抵抗の変化から、GMRヘッド間の電圧に変化が生じるので、ディスク上のデータを検出することができるというわけだ。これがハードディスクの読み出しの原理である。



 なお、これまで図で見てきたディスク表面は、形の整った磁石から構成されているものだったが、実際は、小さな磁性粒子が集まって大きな一単位の磁石を構成している。(下図)


磁性粒子が多数集合して一単位の磁石を構成している。

 ディスクに高密度記録を可能にするには、一つ一つの磁石のサイズを小さくすればよいが、そのためには磁性粒子を小さくする必要がある。次のページでは、どのようにすれば高密度記録が可能になるか、そのときに生じる課題は何かということを見ていこう。



HDDの構成 ハードディスクの課題と今後