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カーボンナノチューブ-ナノデバイスへの挑戦
/化学同人


カーボンナノチューブの基礎
/コロナ社


究極のシンメトリー フラーレン発見物語
/白揚社



 

  
イントロダクション
発見の歴史
導電性・量子的性質
その他の性質
成長メカニズム
生成法
加工・操作
応用例
その1 電界放出ディスプレイ(FED)
その2 走査プローブ顕微鏡の探針
その3 分子エレクトロニクスへの利用
リンク集

 
カーボンナノチューブ
 - 応用例2 走査プローブ顕微鏡の探針としての利用



走査プローブ顕微鏡(STM)の原理図
 「走査トンネル顕微鏡(STM)」は1980年代に発明され、今でもナノの世界を探求する上で重要な役割を果たしている。STMの仕組みは、金属表面を「探針(プローブ)」で掃引して、トンネル電流を検出することで、金属表面がどうなっているかを調べるというものだ。そして、その分解能は水平方向なら0.2nm以下で電子顕微鏡にも劣らず、また垂直分解能においては0.005nm以下という電子顕微鏡にはありえない分解能を示す。

 それほどの分解能をもつのなら、さぞかし細く尖った探針を使っているのだろうと思いきや、実はSTMの発明者であるビニッヒとローラーが採用した探針は、そこらへんにある針金をニッパで斜めに切っただけのものだったのだ。(もちろん現在はもっと厳密なものを使っているが。)この理由は、まさにSTMの名前の通り、トンネル効果に負うところが大きいといえる。(詳しくは「走査プローブ顕微鏡」を参照。)

原子間力顕微鏡(AFM)の原理図
 ただその一方で、同じ「走査プローブ顕微鏡(SPM)」の中の一つである「原子間力顕微鏡(AFM)」は、STMよりは探針の形状に敏感だ。こちらの場合は、原子同士の間にはたらく引力と斥力を利用して、物質表面を検出している。

 AFMの方は探針に、微細加工でつくったシリコンの探針などを使うのが一般的だ。それでも現在の加工技術では、微細加工でつくれる探針の先端の直径は約10nm程度にすぎない。やはり、原子一つと比べれば、はるかに大きな値だ(原子はÅ(10
-10m)レベル)。


 STMにしろAFMにしろ、研究が進むにつれてさらなる分解能を求めるのは必然的な傾向で、そのときには探針がシャープな方がよい。

 理想的な探針は、先端が鋭く(数nm以下)、原子スケールで明瞭な幾何学的形態をもち、化学的に不活性なものだ。ちょうど、カーボンナノチューブはこの条件を満たしており、カーボンナノチューブを探針に使おうというアイディアは、ナノチューブの発見された91年からあった。


 そして、実際に96年にライス大学のR.E.スモーリーらによって、多層カーボンナノチューブ(MWNT)を探針に使ってAFMのデモンストレーションが行われた。従来の探針では届かないような深い溝にも容易にアクセスが可能になった。また、弾性力のあるナノチューブのおかげで、接触によって試料をいためずに検出することができるようになった。また、MWNTは伝導性もあるため、STMの探針としても利用できる。




電界放出ディスプレイ(FED) 分子エレクトロニクスへの利用