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メゾスコピック系の不思議
/丸善


メゾスコピック系の物理
/丸善


Mesoscopic Systems: Fundamentals and Applications
/John Wiley & Sons



 

  
イントロダクション
量子サイズ効果
バリスティック伝導
クーロンブロッケイド、単一電子トンネリング
リンク集

 
■メゾスコピックサイエンス
 − イントロダクション


メゾスコピック系とは?

 金(Au)を次々と半分に切り刻んで小さくしていった場合、それはいつまでも、私たちの知っている金のままでありつづけるだろうか?何やら間の抜けた質問だが、考えてみる価値があるだろう。

 そもそも、切り刻めるほどたくさんの金を手にする機会はめったにないかもしれない。しかし、たとえ小さな金の粒であっても、それを原子の塊として考えれば、数えきれないほどたくさんの原子からなっていることも事実だ。金の原子量はだいたい200程度なので、1グラム程度の金には3x1021個ほどの原子がつめ込まれていることになる。

 このように想像出来ないほど多くの原子からなっている金を、一、二度だけ半分に切り刻んでも、性質が変わることはない。ところが、この操作を際限なく繰り返して、数十nm程度の長さになってくると、あまり馴染みのない量子的な性質が顔を出す。例えば、直径が10nmの金の導線では、コンダクタンスについてオームの法則は成り立たずに、コンダクタンスが飛び飛びの値をとったりする。


 ところで、私たちのよく知っている金と、この馴染みない金との境目が、どのくらいのスケールにやってくるのだろうか?

 実は、その数字は具体的にいえるものではない。そうではなくて、電子が結晶内で原子の散乱を受けずに進むことの出来る距離(平均自由行程)より、試料のサイズが小さいときに、そういった量子的な現象が現れてくるのだ。つまり境界線は、電子の平均自由行程と試料のサイズとの間で相対的なものになる。あえて数字を挙げるなら、数百nmから数nm程度の領域といったところだろう。

 こういった面白い現象が現れる領域を「
メゾスコピック系」と呼び、現在のナノテクノロジー、ナノサイエンスとちょうど同じスケールにあたっている。メゾスコピックサイエンスは低温物理なども含めて幅広い分野で研究されているが、ここでは、エレクトロニクス分野と関係が深いものを中心に取り上げることにしよう。




 ※もう少し厳密には、メゾスコピック系は次のように定義することが出来る。
ミクロスコピック メゾスコピック マクロスコピック
バリスティック領域
(L<l、Lφ)
 ex.量子コンダクタンス
   バリスティック伝導
   クーロンブロッケイド
    …
拡散領域
(l<L<Lφ)
 ex.コンダクタンス揺らぎ
   アハロノフ・ボーム効果
   アルトシュラー・アロノフ・スピヴァク効果
    …
   L:導電性試料のある次元方向の長さ
   l:電子の平均自由行程
   Lφ:位相干渉長
  ただしここでは、もう少し大雑把にメゾスコピック系という言葉を用いている。なお、以下のページに続くいくつかの具体的な現象は、バリスティック領域のものが中心である。







量子サイズ効果