この「ナノエレクトロニクス」のホームページは、現在、サイエンス・グラフィックス(株)が管理しています。すべてのお問合せはこちらにお願いします。また、このホームページは2003年までのもので、現在は内容的に古くなっている可能性がありますが、あらかじめご了承下さい。

ナノテクノロジーの入門サイト。CGを駆使して解説。書籍紹介、R&Dリンク集など。






メゾスコピック系の不思議
/丸善


メゾスコピック系の物理
/丸善


Mesoscopic Systems: Fundamentals and Applications
/John Wiley & Sons



 

  
イントロダクション
量子サイズ効果
バリスティック伝導
クーロンブロッケイド、単一電子トンネリング
リンク集

 
■メゾスコピックサイエンス
 − 量子サイズ効果


量子サイズ効果

 20世紀前半、量子物理の誕生と共に、それまで波だと考えられていた光は粒子としての性質ももち合わせていることが分かり、その一方で、粒子だと考えられていた電子は波としての性質をもち合わせていることがわかった。これが量子力学で有名な粒子と波動の二重性だ。


左がバルクスケールで連続的なエネルギーバンド構造をとっている。右は量子的な性質が現れるメゾスケール。

 そこで電子を波として考えれば、規則正しい結晶構造を無限に繰り返している金属内に存在している電子は、一様に広がった波のように考えることが出来る。また電子のエネルギー準位は、連続的なバンド構造をとる。

 ところが、金属が切り刻まれてどんとんと小さくなり電子の波長程度の大きさになると、電子のエネルギー準位が離散的になることが知られている。このことは、両端を固定された弦が、もはや自由な振動形態をとることが出来なくなり、基本振動、2倍振動・・・と離散的な値しかとれなくなることに似ている。こうして離散的なエネルギー準位をもつようになった電子の影響で、その金属の比熱や帯磁性には、それまでになかったような性質が現れてくる。低温の金属微粒子でこの離散的な影響に気づき、国内で草分け的な研究を行っていたのは、東大の久保亮五だといわれている。そのため、エネルギー準位の離散化にともなうこういった変化を久保効果と呼ぶこともある。



量子効果と次元 - 量子井戸、量子細線、量子ドット


 金属が電子の波長程度の大きさになって電子が閉じ込められることで量子サイズ効果が現れてくるが、閉じ込めの方位性によって次のように分けられる。

 三次元方向に(電子からみれば)果てしなく広がった金属は「バルク(bulk)」などと呼ばれているが、これを一方向から狭めていき、その方向が電子の波長程度の大きさになると、電子は二次元的にしか移動できなくなる。これを「量子井戸(quantum well)」と呼んでいる。この量子井戸は超格子状にして、たとえば量子井戸レーザーなどのオプトエレクトロニクス機器に使われている。量子井戸のおかげで青色レーザーが可能になり、DVDや次世代光ディスクなどの大容量情報ストレージが実現した。(詳しくは「半導体レーザー」、「青色レーザーの実現までの道のり」などを参考に。)

 二次元的に電子を閉じ込めたのが量子井戸だったが、さらにもう一つ別の方向を狭めていき、電子を一次元的に閉じ込めると、「量子細線(quantum wire)」となる。量子細線は、私たちの知っているバルクな導線と異なり、オームの法則に従わないなどの面白い性質が現れてくる。また、電子一つ一つを制御しながら送ることが出来る単一電子輸送などが期待されている。(これについてはあとで「単一電子輸送、クーロンブロッケイド」のページで取り扱う。)

 さらに別の方向を電子の波長程度の大きさにすると、もはや電子はどの方向にも進めなくなり、電子にとっては零次元の世界になってしまう。この状態が「量子ドット(quantum dot,量子箱とも)」と言い、現在光情報通信や量子暗号通信などの分野で研究が行われ、大きく期待されている。(詳しくは「量子ドット」で。)




イントロダクション バリスティック伝導