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ここまできた光記録技術―光記録産業の巨大化へ向けて
 /工業調査会

     最終更新日;2002/10/12
 

  
イントロダクション
光ディスクの基礎
CD-ROM,CD-R/RWの比較
DVDについて
次世代光ディスクについて
リンク集

 
■光ディスク
 − DVDについて

「オーケストラ」から「ハリウッド」へ

 大容量のデータ保存にまったく無力なフロッピーディスクに取って代わるかたちで登場してきたCDだったが、映像の記録となるとCDでも同様に無力になってしまう。CDは「オーケストラ」を自宅で再現できるようにしてくれたが、「ハリウッド」までは再現してくれなかったのだ。

 一般にCD-ROMにMPEG1形式で映像を記録する場合、その画質は三倍速で録画したビデオテープのものよりも粗いうえに、一枚のディスクに保存できるのは70分程度のものだけだ。仮に高画質のビデオテープ並のMPEG2形式で記録するとCD-ROMでは20分以下になってしまう。

 結局、ハリウッドを自宅で楽しめるようになったのは、DVD(digital versatile disc)の登場のおかげだ。DVDはCDと同じように120mmの直径、1.2mmの厚さにもかかわらず、その記憶量は最大で約17GB、転送速度やアクセス速度もCDよりもはるかに優れている。では、このDVDの物理的な中身はどうなっているのだろう?


DVDの情報密度


図.CDとDVDの物理的な比較
 DVDの基本的な原理はCDのものとほとんど変わらない。ただし、CDと同じ大きさのディスク上により多くの情報を詰め込むためには、それだけ情報を記録するピットのサイズが小さくなければいけない。図にもあるように、CDの最小ピッチが0.83μm、トラックピッチが1.6μmであるのに対し、DVDではそれぞれ0.4μm、0.74μmである。それに伴って必要なレーザーの波長も短いものでなければならなくなる。CDのレーザーはほぼ赤外の0.78μmの波長の光が使われているのに対し、DVDでは可視領域の0.64μmのものが使われている。おかげでDVDのディスクの片面には4.7GBの情報を書き込むことが出来る。

 DVDのレーザー光の波長が短くなったことでうれしい副作用が生じるようになった。光の波長とデータ層と読み取りヘッドの間の距離とには関係があり、波長が短くなるとプラッター(ディスクの主要な層)が薄くなる。おかげでDVDのプラッターの厚みは0.6mmとなり、その裏に厚みが0.6mmのプラスチックのブランク層を貼り付けてある。これが片面用のDVDである。もちろんこのブランク層をストレージのために有効に使うことも出来る。ブランク層を貼り付けるかわりにデータ層を貼り付けて、両面でストレージを可能にすればよいのだ。これによって両面のDVDは9.4GBの情報を書き込むことができる。しかしDVDには、これ以外にも情報を蓄えるスペースが残されているのだ。レーザーの焦点距離を調節すれば、片面に二層のデータを蓄えることが出来るようになる。もっともニ層目は反射率の低さなどが原因で一層目ほど高密度に書き込むことが出来ないので、単純に2倍、4倍ということにはならないが、片面二層式のDVDなら8.5GB、両面二層式のDVDなら17GBの情報を書き込むことが出来るのだ。現在の映画用のDVDには片面ニ層式のものがよく使われている。


記録型DVD 厄介な規格対立

 DVDの登場は「ハリウッド」の再現を可能にし光ディスクの新しい世界を切り開いたが、記録型のDVDに関してはそれほど円満にはいかなかった。現在記録型のDVDはDVD-RAM、DVD-RW、DVD+RWと互換性の少ないいくつもの規格が乱立している。とくにDVD-R/RWとDVD+R/RW(俗に「マイナス」と「プラス」)の二つの規格について、二つの企業コンソーシアムの対立の構図が出来あがっている。しかもMicrosoftやAppleなどのパソコンOS会社や、Dell ComputerやHewlett-Packard(HP)などのPCメーカーがどの規格を後押しするかといったことが複雑に絡んできて事態が分かりにくくなっている。最近は記録型DVDドライブの価格は一般のユーザーにも手ごろなものとなってきているが、この規格の対立が記録型DVD普及の一つの障害となっている。細かい規格やフォーマットの話はこのサイトの趣旨から逸脱してしまうので、現在の状況だけを簡単に見ておこう。

 表.具体的な規格
DVD-R/RW
 DVD-Rは1997年にパイオニアが開発した一度限りの書き込みが可能な記録型DVD。ほとんどの市販DVDプレイヤー、DVD-ROMプレイヤーで再生が可能。しかし記録用装置が登場したばかりは非常に高価で主に業務用だった。データの記録には色素変化を採用している。

 DVD-RWは1999年に登場したが、当初は一般のDVDプレイヤーではほとんど再生できず、まったく普及しなかった。実際に普及しはじめたのは2001年のことである。DVD-RWはデータ記録に相変化を採用しているが、データ層が低反射なために一般のDVDプレイヤーでは読み取りにくいという問題がある(「CD-ROM,CD-R/RWの比較」のCD-RWを参考に)。市販DVDプレイヤーと互換性が高いかどうかを決定するのは、要するに低い反射率の記録型DVDを認識できるかどうかにかかっている。
DVD-RAM
 1998年に登場したいちばん最初の書き換え可能な記録型DVDであり、安価な記録ドライブが登場したこともありパソコンを中心にはじめて普及した記録型DVDである。日立、松下、東芝などが提唱した。普通のDVDとは異なり、フロッピーディスクやMOディスクのようにカートリッジ式になっているのが特徴。記録には相変化を利用している。パソコンのデータ保存では便利だが、再生にはDVD-RAM専用のプレイヤーが必要となり、市販DVDプレイヤーでは再生できない。今後、DVD-RAMが記録型DVDの主役になるのは難しいというのが、現在の多くのアナリストの見解。
DVD+R/RW
 かつてDVD-RAMとDVD規格の覇権を争って敗れ去った記録型DVD。その後、ソニーとPhillipsの独自規格としてスタートし、2001年終わりごろからやっと市場に登場してきた記録型DVD。現在、市販DVDプレイヤーとの互換性の低さから落ち目にあるDVD-RAMを尻目に、DVD+R/RWはDVD-R/RWと規格競争を繰り広げている。データ記録の原理は相変化である。

 なお、「DVD」という規格を決めているのはDVDフォーラムという団体であり、ここがDVD規格として認めている記録型DVDはDVD-R/RW/RAMである。そのためDVD+R/RWは「DVDフォーラムが認可したDVD」ではなく、ソニートフィリップスの独自規格ということになる。ただしDVDフォーラムが認可した記録型DVDだからといって、今後の市場で実際に普及するとは限らない。

 確かにDVD-R/RWとDVD+R/RWについて細かいところに注目すれば、いくつかの違いを見つけることは出来る。しかし今後、どちらの規格が勝利しようが、もしくはドライブが両方に対応していくことになろうが、光ディスク技術という大きな視点から見ればその差はほとんど皆無というのが事実である。

 規格競争について最近の細かい事情が知りたい人は、「リンク集」のページに関連記事が紹介してあるので、それを参考にするとよいだろう。



CD-ROM,CD-R/RWの比較 次世代光ディスクについて