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カーボンナノチューブ-ナノデバイスへの挑戦
/化学同人


カーボンナノチューブの基礎
/コロナ社


究極のシンメトリー フラーレン発見物語
/白揚社


Carbon Nanotubes and Related Structures: New Materials for the Twenty-First Century
/ Cambridge Unv. Pr.


Physical Properties of Carbon Nanotubes
/ World Scientific Pub. Co.


Carbon Nanotubes: Synthesis, Structure, Properties, and Applications
/ Springer Verlag



 

  
イントロダクション
発見の歴史
導電性・量子的性質
その他の性質
成長メカニズム
生成法
加工・操作
応用例
その1 電界放出ディスプレイ(FED)
その2 走査プローブ顕微鏡の探針
その3 分子エレクトロニクスへの利用
リンク集

 
カーボンナノチューブ
 − CNTの配向を制御し、導電性で分類する


 CGなどでカーボンナノチューブ(CNT)がどんな風になっているかを見たことがある人にとっては、CNTというのは一本だけで生成するものだと思いがちだ。

 しかし実際のCNTは、たくさんのナノチューブが束になって、まるで絡まったスパゲティのような状態で生成する。チューブの長さ、直径、らせん度がそろっていないだけでなく、ナノチューブの配向や配列もまったくのランダムということが多い。

 CNTは直径やらせん度によって、金属にも半導体にもなり得るので、CNTの成長や配向をある程度コントロールできないと、分子デバイスなどとして利用することは難しい。

 またCNTの配向が制御できるようになれば、CNTをエミッタとして利用する電界放出ディスプレイ(FED;field Emission Display)の製作も容易になり、FEDの実用化にもはずみがつくだろう。

 このページでは、最近の研究から、ナノチューブの配向・成長を制御する方法と、金属半導体を分ける方法とを紹介しよう。


CNTの成長・配向を制御する

 ここ数年、簡単な方法で大量のCNTを生成できるということで、三種類あるCNTの生成方のなかで、信州大学の遠藤守信らの提案した気相成長法が注目されている。

 しかもごく最近、この気相成長法で触媒などを上手に利用すれば、あらかじめ決めておいた向きにCNTを成長させることが出来ることが分かってきた。

 例えば、1999年に米スタンフォード大学のダイ(Hongjie Dai)らのグループは、アセチレンガスを用いて、電気化学的にエッチングしてつくった多孔性のSi基板上に、触媒のFeを電子ビームで蒸着してパターニングすることで、配向したCNTを特定の領域のみに成長させることに成功した。世界中で研究開発が行われている電界放出ディスプレイ(FED,field Emission Display)にDaiらの報告ははずみをつけた。[1]

 また、2002年には米レンセラー大学のアジャン(Pulickel Ajayan)らのグループが、あらかじめエッチング処理しておいたシリカ(SiO2)上に、CVD(Chemical Vapor Deposition)で配向のそろった多層式カーボンナノチューブ(MWCNT;multi-walled carbon nanotube)を成長させ「ひな菊」を作成した。このデモンストレーションで、基板の垂直方向だけでなく三次元方向にCNTの成長・配向をコントロールできることが示された[2]。

ナノチューブの配向を制御してつくった「ひな菊」の写真(720K)
http://www.rpi.edu/dept/NewsComm/sub/Pressimgs/nanophoto/nanophoto.jpg


 さらに2002年7月に、富士通が自己組織化を利用して、MWCNTの垂直成長と直径制御に成功したと報道している。

MOSFETの電極となるシリサイド層上への多層カーボンナノチューブの垂直成長と直径制御に成功 - 富士通研究所(プレスリリース,2002)
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2002/07/8-1.html

ナノチューブの導電性で分類する

 CNTの直径や長さなどは、気相成長法などでも、エチレンガスの供給量や触媒、温度によって、ある程度制御できるようになった。ただし、螺旋度の違いによって生じる金属・半導体といった違いに関しては区別することが出来なかった。らせん度の違いからくるわずかな直径の違いでは区別が難しいためだ。

 ところが2001年に、IBMのコリンズ(P.G.Collins)らは、様々な種類のCNTをまとめて束にして電圧をかけることで、電気の流れる金属CNTを選択的に破壊して、半導体CNTだけを残す方法を発見した。[3]

 これまでは、CNTをナノワイヤに使って電子回路を組みたてるときに、CNTの配向や制御や分類をSPMなどを使って手作業的に行っていたが、今後はこの自己組織化技術や選択的破壊技術などが重要視されていくのだろう。


Source
[1]Shoushan Fan, Michael Chapline, Nathan Franklin, Thomas Tombler, A. Cassell and Hongjie Dai, "Self-Oriented Regular Arrays of Carbon Nanotubes and Their Field Emission Properties", Science, 283, 512 (1999)

[2]B. Q. WEI, R. VAJTAI, Y. JUNG, J. WARD, R. ZHANG, G. RAMANATH & P. M. AJAYAN "Microfabrication technology: Organized assembly of carbon nanotubes ",Nature, 416, 495(2002)

[3]P.G.Collins, Michael S. Arnold, Phaedon Avouris
"Engineering Carbon Nanotubes and Nanotube Circuit Using Electrical Breakdown",Science 292 706(2001)
(IBMのサイトを通じて閲覧可)



生成法 その1 電界放出ディスプレイ(FED)