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     最終更新日:2003/4/5





発光型ディスプレイ〈1〉CRT、薄型CRT、VFD、FED シリーズ先端ディスプレイ技術〈4〉
/共立出版


ディスプレイの基礎
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イントロダクション
電界放出とは?

FEDの仕組み・構成
今後の課題/ナノチューブを使った展望
関連リンク集

 
■電界放出ディスプレイ,FED(Field Emission Display)

イントロダクション

 
電界放出ディスプレイ(FED, Field Emission Display)は、ブラウン管ディスプレイ(CRT)と液晶ディスプレイ(LCD)のおいしいとこ取りをしたようなディスプレイといえる。

 そのコンセプトを簡単に言ってしまうと、CRTにひとつだけある大きな電子銃を小さくして数を増やし、ピクセルごとに電子銃を配置したディスプレイといったところだろう。ただし、たいていの場合、1ピクセルにひとつの電子銃というわけではなく、無数の電子銃が使われているのが普通だ。

 原理的には、電子銃を使ったCRTと多くの点で共通しているため、広視野で発色やレスポンス速度が優れているうえに、液晶のようなフラットや薄型化も可能となる。

 最近では、
(多層)カーボンナノチューブを使ったFEDが国内の伊勢電子や韓国のサムスンなどで開発されているということで話題になっているが、FEDはどんな仕組みで、どんな長所、短所があるのだろうか?


「電界放出」とは?

 固体表面に強い電場がかかると、固体表面に閉じ込められていた電子は、表面のポテンシャル障壁が低くなるために、トンネル効果で真空中に飛び出しやすくなる。この現象を「
電界放出(field emission)」と呼んでいる。

 この現象を観測するには、非常に強い電圧を固体にかけなくてはならない。しかし電圧をかける面積が小さくなればその分だけ電場が集中するので、金属針のようにとがらせたものなら小さい電圧で済む。そのため「電界放出型電子源」には、先端の鋭くとがったものが用いられている。

 一方で、CRTの電子銃は「熱放射」で、熱することによって電子を真空中に放出させる。この点が、FEDとCRTの最大の違いと言える。当然のことながら、熱放射より電界放射によって電子を放出するほうが省エネで、あとで説明するように、フラットで高解像度なディスプレイが可能となる。






FEDの仕組み・構成


電界放出ディスプレイの原理図。いくつかのパーツの紹介は省略してある。

 FEDの大まかな構造は、真空の空間が二つのガラスシートによってはさまれたものになっている。そのガラスシートのうち、
カソード(陰極)からは電界放出によって電子が放たれる。このときの電子はカソードとゲート電極の間の電圧の差によって生じる。

 真空中に放出された電子は
アノード(陽極)の方に向かって進み、途中で蛍光体に衝突して光を放つ。こうして、RGBの三つの蛍光体一組から発せられた可視光が、ディスプレイの1ピクセルに相当する。


 従来のFEDでは電子放出源に
マイクロティップが使われてきた。1ピクセルを構成するのに必要なマイクロティップの数は一つではなく、数千個規模のマイクロティップ・アレイが使われている。このマイクロティップの材料には、シリコンやモリブデンが使われている。他にも、電子放出源に効率のよいダイヤモンド薄膜(負の親和力をもつ)を利用したものもある。

※上述の電子放出源の分類について一部誤りがありましたので修正いたしました。(04/11/14)


 アノードとカソードの距離は200μmと小さく、結果としてCRTに比べて薄型でフラットなディスプレイが可能になる。また原理はCRTに似ているので、発色がよく画像も鮮明である。


今後の課題・ナノチューブを使った展望

(ナノチューブを使った展望について、詳しくは「カーボンナノチューブ/応用その1 電界放出ディスプレイ」を参考に)


 ・消費電力などについて

 電子放出源にマイクロティップやダイヤモンド薄膜が使われている従来のものは、大きな電圧をかける必要がある。そのため破損が起きないように高度な真空技術が必要となる。そこで、低電圧で電子放出が可能なカーボンナノチューブの利用が研究されている。

 いずれにしても消費電力の問題から、電界放出ディスプレイはモバイル系のディスプレイに利用するのには不向きだと考えられている。


 ・加工プロセスとコスト

 従来のFEDでは製造にコストがかかりすぎることが問題だった。例えば、マイクロティップのものでは、リソグラフィーなどの高価な半導体微細加工が必要になる。また、ダイヤモンド薄膜の作成には高温下での化学処理が必要となるため、ガラスシート破損の問題などが挙げられる。

 そのため最近では、大手企業はこのFEDの開発に消極的になり、現在はベンチャー企業などが研究をするにとどまっているというのが実情だ。

 そのためベンチャーの取り組みが重要になるのですが、その中で、カーボンナノチューブを使って製造プロセスを簡略化するといったものがある。

 ナノチューブアレイは、マイクロティップのように微細加工技術を用いるのではなく、「自己組織化」を利用してつくることが可能だと考えられている。そのため、自己組織化などをコントロールできるようになれば、制作コストを抑えられ、環境にもやさしいFEDの制作が可能となる。

 今後、FEDが市場に出回るようになるには、こういったベンチャー企業がいくつもの技術的なブレイクスルーを成しとげられるかにかかっている。



関連リンク集

ナノエレクトロニクスから

 カーボンナノチューブ

 
有機ELディスプレイ(OEL)
 
液晶ディスプレイ(LCD)
 
プラズマディスプレイ(PDP)
 電子ペーパー、EPD


外部リンク
 R&Dリンク
  国内
   
斎藤弥八 - 三重大学
   
伊勢電子
   双葉電子
   ソニー (プレスリリース2000)
  海外
   
Samsung Advanced Institute of Technology(SAIT)
   
PixTech
   
Candescent

 FED解説ページ
  双葉電子、カーボン・ナノチューブ使ったFEDパネル - 日経BizTech(2003/2)
  Field Emission Display Technology - DeviceLink
  field emission display - whatis.com