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Organic Light-Emitting Devices: A Survey
/ Springer Verlag


光ディスプレイ Ohm mook―光シリーズ
/ オーム社


有機ELビジネス最前線
/ 工業調査会



 

  
イントロダクション
有機ELの基礎
発光のメカニズム
量子効率について
パッシブマトリクス・アクティブマトリクス
フルカラーの実現
今後の課題と展望/リンク集

 
有機ELディスプレイ
 − フルカラーの実現


 有機ELディスプレイが現在これほどまでに注目されているのは、フラットパネルディスプレイ(FDP)として市場をほとんど独占している液晶ディスプレイ(LCD)に取って代わるだけのポテンシャルをもっていると考えられているからだ。

 そのためにはフルカラーを実現しなくてはいけない。フルカラー実現のためには、何らかの方法でRGBのサブピクセルをそろえてやる必要がある。それには、下で紹介するようにいくつかの方法がある。なかにはLCDと同じ方法もあるが、液晶分子をセルに閉じ込めているLCDと違い、有機ELディスプレイはフィルム状の薄型化が可能なので、LCDではまったく考えられなかったような新しい方法もあるのに注目しよう。


A. もっともスタンダードと思われる方法。RGBそれぞれの色に発光する有機分子を用意し、順番に配置してサブピクセルを構成するという方法である。例えば、未ドープでは緑色発光のAlq3に染料をドープしてやると他の色の発光が可能になる。この構造は単純明快だが、実際に製造するとなるとコストがかかりすぎるという問題が生じる。というのも、有機ELセルはRGBの三種類となり、有機層を色別に配置していかなくてはならないからだ。


B. Aと比べて製造過程を簡略した方法。白色OLED(有機LED)を背面に配置し、RGBのカラーフィルタを通してフルカラーを実現するというもの。有機ELセルがすべて白色で共通しており、Aのように有機ELセルを色ごとに配置していく必要がない。ちなみに、この白色光源とカラーフィルタを用いる方式は、一般的なLCDと同じである。

 ただしこの方法では、発光効率がよいとはいえない。白色光のエネルギーのほとんどはカラーフィルターに吸収されてしまい、輝度が低い。(RGBすべて混ざった白色光がRGB原色になるのだから、単純に考えれば2/3の光を失うことになる!)


C. 白色光をカラーフィルターに通すのではなく、青色光や紫外線(短い波長の光)を蛍光体に吸収させ、赤色光や緑色光(長い波長の光)を出させるという方法。このほうが、Bよりエネルギー効率が高いことが分かっている。


D. 分厚い液晶セルが必要となるLCDと異なり、有機ELセルは数μm以下の薄型にすることができる。そのため、LCDでは考えられなかったような発色方式が可能となる。それがSOLED(transparent Stacked OLED)という方式だ。これはRGBのサブピクセル3つを縦に配置して1つのピクセルを構成するというものだ。

 SOLEDの特徴は、RGBそれぞれの発光層と透明電極が重なった(stacked)状態になっていることだ。RGBの発光層は、透明電極によって個別にコントロールすることができる。三つのサブピクセルを縦に配置して1つのピクセルを構成する方法は、横に並べる方法と比べてコンパクトにすることができ、これまでのディスプレイよりもずっと高解像度なものをつくれるようになる。例えば、携帯電話など小さなディスプレイでウェブ閲覧するときに、非常に滑らかな画像表示を可能にするだろう。このスタック層をつくるには、それなりの薄膜形成技術が必要になるが、SOLEDは大きく注目されている方式である。



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