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     最終更新日2003/4/8




光エレクトロニクスの基礎と活用法―発光ダイオードからフォト・カプラ,赤外線,光ファイバの応用まで
/CQ出版


ヤリーヴ光エレクトロニクス 基礎編
/ 丸善


ヤリーヴ 光エレクトロニクス 展開編
/ 丸善



 

  
イントロダクション
LEDを理解するための前知識
LEDの仕組み 基礎編
LEDの仕組み 応用編
次世代照明としての白色LED

リンク集

 
発光ダイオード、LED(Light Emitting Diode)


エレクトロルミネッセンスを利用した発光素子の効率改善の歴史。無機結晶のものと有機分子のものを挙げた。

LED照明の現状

 1962年に米国ゼネラルエレクトロニクス(GE)の研究者によってLEDデバイスがつくられてから、すぐにLEDの照明への利用が提案された。そしてそれ以来、LEDは確実な効率の上昇を続けた(上図)。そして90年代前半に高輝度な赤色LEDが、90年代末に高輝度な青色LEDが完成し、LEDの性能は劇的な進化を遂げた。

 現在、LEDの効率は白熱灯をやや抜いたところにある。とくに単色光源として用いる場合は、白熱灯の効率よりもはるかに優れている。例えば、信号機の赤色ランプを例に考えてみればよい。

 信号機の直径30cmの白熱灯は、フィルタがついていない白色光のままなら140Wで2000lm(ルーメン)あるのに対し、赤色フィルタをつけることで白色光の大部分(緑青範囲など)が吸収されてしまい、結果的に200lm程度になってしまうのだ。この200lmというのは標準的な赤色LED10本程度で実現でき、その消費電力は15W程度にすぎない。白熱灯を用いて単色光を実現するというのがいかに無駄が多いことか分かるだろう。

 しかしLEDは、白熱灯や蛍光灯と比べて、初期設置費用がはるかに高いことを忘れてはならない。白熱灯と比べれば二桁、蛍光と比べても一桁近く余分に初期設置費用がかかる。蛍光灯(50〜100lm/W)との初期設置費用の差を埋めるには、白色LEDが150〜200lm/Wを達成しなければいけないとされている。もちろんこれは白色LEDの寿命の長さを考慮した上での話だ。

 このように現時点では白色LEDは蛍光灯に追いついていないが、今後の技術的な進歩で蛍光灯を追い抜くことができると考えられている。




照明に最も向いている白色LEDをどう実現するか?
 照明は白色光が最適なのは言うまでもないが、LEDで白色光を得る場合、少し考えなければならないことがある。LEDの光の色は、エネルギーの高い電子がエネルギーの低い位置に落ちたときの差分(バンドギャップ)に依存するので、LEDチップに使う半導体結晶に固有のものとなる。そのため、LEDの光は赤や緑、青などの単色である。では白色を得るためにはどうすればよいだろうか?以下の三つの選択肢を考えてみよう。

 選択肢1 赤+緑+黄 = 白

 RGBすべてのLEDを揃えて同時に発光させれば白色光が得られる。発想は簡単だが、実際に白色光が得られるようにコントロールするのはそれほど簡単ではない。例えば、LED独特の指向性の強さゆえに、見る方向によって色ムラが生じやすい。また、それぞれの色のLEDで温度などの環境に対する変化の割合が異なったり、劣化の速度なども異なるため、はじめの白色光をキープするのは容易ではない。

 選択肢2. 青色+蛍光体 = 白(?)

 電気が直接光にかわる現象はエレクトロルミネッセンス(EL)というが、光が別の波長(したがって別の色)の光にかわる現象をフォトルミネッセンス(PL)という。このELとPLをうまく組み合わせて、青色LEDひとつとYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体などで白色LEDを実現することができる。蛍光体はLEDと比べればはるかに安いので、青色LEDの価格に近い白色LEDをつくれる。しかもパッケージ上は一つのLEDで白色光が得られるのは魅力的。具体的な仕組みは次の通りだ。

 蛍光体は,青色光を黄色の光に変換する。発光ダイオード・チップ(GaN)が放射する青色光の一部は蛍光体層を透過し,残りは蛍光体に当たって黄色の光になる。この2色の光が混ざり合って白色に見える。(下図参照)

図.青色LEDと蛍光体を使用して白色光をえる方法。

 しかしこれらの方法で得られた白色光は、色の再現性が乏しいことが課題になっている。黄色と青色を混ぜることで白色を再現しているわけだが、この白色光で赤い物体を照らすと実際より黒く見えてしまうのだ。再現性をよくするためには、様々な色の蛍光体を増やせばよいのだが、増やしすぎると蛍光体に光の多くが吸収されてエネルギー効率が下がるという問題もある。

 なお、上の発想とほとんど同じだが、蛍光体を使わず、青色LEDチップ(ZnSe)をのせる基板のPL発光を利用するというタイプもある。青色LEDチップから放たれた青色光は一部基板に吸収され黄色光として放たれる。一つのLEDチップですむという利点がある。この方法は住友が採用している。



どうやって表面積の大きい光源(拡散光)を実現するか?

 白色光を低コストで得られるようになったら、次はどうやって表面積の大きい光源を実現するかを考えなくてはいけない。LEDが光る部分はわずか米粒程度で指向性が強く、照明として利用するには、光る部分がもっと大きくなければいけない。いくつかの選択肢を考えてみよう。

 選択肢1. 物量作戦

  単純に白色LEDの数を増やしてやれば、発光部分の面積が増える。右図。

 選択肢2. 散光板を使う

  携帯などのカラー液晶ディスプレイではバックライトに白色光LEDが使われているが、ディスプレイを斜めから見てみるとギザギザが見える。これはくさび型の散光板を使っているためで、これによって発光面積を大きくしている。モバイルのような大きさに制約のあるものにはつかえる方法。発光ムラをなくす点でもよい。


 このようにして、一応の白色LED光源が実現すれば、あとは従来の照明器具と同じような方法でパッケージングしてやることでLED照明ができあがる。


白色LED照明の特徴
 最後に、白色LEDを照明として使った場合の特徴をまとめておく。
 ・白熱灯・蛍光灯に比べ省電力、ランニングコストが安い
 ・一方で初期投資は高くつく
 ・寿命が長い・取替えの手間が省ける
 ・蛍光灯のように水銀などの有害物質を使っていない




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