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光エレクトロニクスの基礎と活用法―発光ダイオードからフォト・カプラ,赤外線,光ファイバの応用まで
/CQ出版


ヤリーヴ光エレクトロニクス 基礎編
/ 丸善


ヤリーヴ 光エレクトロニクス 展開編
/ 丸善

 



 

  
イントロダクション
LEDを理解するための前知識
LEDの仕組み 基礎編
LEDの仕組み 応用編
次世代照明としての白色LED

リンク集

 
発光ダイオード、LED(Light Emitting Diode)
 - LEDの仕組み 基礎編

LEDのチップとパッケージの例。最も構造の簡単なホモ接合を示した。光は主にチップ表面と一部側面から放出される。透明樹脂の先端はレンズ作用をもっており、中心軸方向に強く光が放出されるようになっている。

 LEDの構造は、前のページで紹介したpn接合が基本となっている。先ほど拡散がとまった状態のpn接合に順バイアスをかけたときの様子を考えたが、今度はもう少し詳しく見てみることにしよう。

 これまでは電子と正孔を同時に見てきたが、これからは話をわかりやすくするために電子の振る舞いだけに限って見ることにする。基本的に正孔は電子と反対の振る舞いをすると考えればよい。


ホモ接合構造のLEDの発光のメカニズム。熱平衡状態と順バイアスをかけた状態とのエネルギー帯図を示した。

 順バイアス方向に電圧をかけるとエネルギー障壁が低くなるために、n型半導体に偏っていた電子はp型半導体の方へ移動しやすくなる。そうしてp型半導体に移動した電子は、エネルギーの高い「
伝導帯」からエネルギーの低い「価電子帯」にある空席に落ちる(正孔と再結合する)。ここで失われたエネルギーは光(hν)として放出される。これが最も単純な「ホモ接合構造」のLEDが発光する原理である。

 それでは、この光の色や明るさ(輝度)といった性質とLEDの構造とでは、どのような関係があるだろうか?


光の色

 p型半導体の伝導帯と価電子帯のエネルギー差(
バンドギャップ)が大きいほど、電子が伝導帯から価電子帯へ落ちるときに発せられる光のエネルギーは大きなものとなる。また、光の色は波長によって変化する。また波長は光のエネルギーが大きいほど短いものとなる。

 そのため、光の色は半導体のバンドギャップの大きさによって左右されることになる。バンドギャップは材料によってほぼ決まるので、放出される光の色は材料によって決まるといえる。下の表に、材料と光の色との関係を示した。


材料 ピーク波長 接合構造
InGaN 450 量子井戸
ZnCdSe 489 ダブルへテロ
ZnTeSe 512 ダブルへテロ
GaP 555 ホモ
AGaInP 570 ダブルへテロ
InGaN 590 量子井戸
AlGaAs 660 ダブルへテロ
GaP(Zn-0) 700 ホモ
赤外 GaAs(Si) 980 ホモ
InGaAsP 1300 量子井戸



光の明るさ(輝度)

 輝度はpn接合構造の発光効率によって左右される。効率を上げるためには、接合領域で多くの電子と正孔を集めることが重要な鍵となる。

 今紹介したホモ接合構造のLEDは、p型とn型の結晶が同じ材料で作られており、構造が簡単なので安価なので安価であるが、発光効率はよくない。それはpn接合付近で発光した光が結晶から外部に出る前に吸収されてしまう割合が高いためである。そのため、ホモ接合構造は低輝度発光LEDとなる。

 発光効率がよい構造としては、「
ダブルへテロ接合構造」や「量子井戸接合構造」がある。これらの構造はホモ接合構造と比べて複雑だが、20世紀末の一大ブレイクスルーと考えられている「青色LED」や、LEDを応用した「半導体レーザー」などの理解には必須である。次のページに、その二つの接合について簡単に述べておく。



LEDを理解するための前知識 LEDの仕組み 応用編