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Amorphous and Nanocrystalline Materials: Preparation, Properties, and Applications
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Disordered Materials
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金属なんでも小事典―元素の誕生からアモルファス金属の特性まで
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■アモルファス&ポリシリコン
 − 低温ポリシリコン

低温ポリシリコンの実現

 p-Siはa-Siとくらべて少なくとも100倍程度の電子移動度を実現できる。これは大きなアドバンテージだが、加工の難しさとトレードオフになっていることも事実だ。

 結晶性のよいp-Si膜を形成するためには、1,000℃以上の高温環境で処理しなけらばならず、通常のガラス基板では溶融しまうため、高価な石英基板を使わなければならい。そのためp-Siの利用は、非常に限られていた。

 しかし数年前から、レーザーを用いて500℃前後の低温環境でp-Si膜を形成することができるようになった。

 エキシマレーザー(波長308nm)はa-Si薄膜に効率よく吸収されるために、その下の基板を加熱しすぎて傷めてしまうことはない。下図のように、パルス発振のエキシマレーザーを約25nsの間隔で照射すると、a-Si膜は加熱され溶解する。これを冷やすと再度結晶化が起こり、p-Siが形成される。このような操作を「アニ−リング(anealing,焼きなまし)」と呼んでいる。


エキシマレーザーによるアニ−リング

 これによって、高価な石英基板から、比較的安価なガラス基板にとりかえられるようになった。こうしてp-Siを使ったTFT液晶は出回り始めるようになった。


電子移動度の大きい低温ポリシリコンへ

 こうして実現した低温p-Siだったが、その電子移動度は100〜150cm2/Vs程度と、c-Siの1000cm2/Vsと比べればはるかに小さい。この程度の電子移動度では、LCDのTFTをコントロールするドライバICにp-Siを使うことはできない。仮にドライバICにp-Siを利用できれば、これまで外部にあったドライバICをガラス基板上に作成することが可能になり、配線などを大幅にカットすることができるようになる。これを可能にするためには、電子移動度が300cm2/Vs程度は必要となる。

 エキシマレーザーによるアニ−リングで形成した低温p-Siの電子移動度が低い理由はいくつかあるが、そのなかでも特に重要なのが結晶粒界密度だろう(前のページの図を参照)。結晶粒界では電子が散乱されてしまうため、結晶粒界を通過する頻度が多いほど、移動度は小さくなる。移動度を高めるためには結晶粒界密度を減らす努力が必要になるが、それには結晶粒一つ一つを大きくして向きを揃えてやればよい。

 エキシマレーザーの場合ではp-Siの結晶粒径が0.3μm程度と比較的小さいため、移動度の劇的な上昇のためには、エキシマレーザー以外の手段が必要だと考えられてきた。


 その候補の一つとなるのが、2001年に富士通の考えた「CWレーザー(continuous-wave)」を用いた方法だ。CWレーザーとは文字の通り連続発振しているレーザーで、エネルギー安定性が高い半導体励起固体を利用している。

 この技術を用いることで、現状の結晶粒に比べ、100倍程度の大きさの結晶粒を有するp-Si薄膜をガラス基板上に形成することが可能になった。この結晶を利用して従来の450℃のプロセスによりTFTを形成した結果、移動度400-600 cm2/Vsを有するp-Si TFTをガラス基板上に実現することに成功した。
(詳細;富士通プレスリリース 2001年7月


 また別の候補として、シャープの「低温CGシリコン液晶(Continuous Grain:連続粒界結晶)」がある。これはシャープが98年に発表し、今後同社がLCDで展開していくためのキーテクノロジーと位置付けられている。低温CGシリコンは独特な低温p-Si技術で、シリコン結晶を規則的に並べることで、原子レベルで連続性を持たせ、電子移動度を高めるというものだ。これによって電子移動度は300cm2/Vsに上昇している。
(詳細;Sharpプレスリリース1998年)

 このように、低温p-Siの電子移動度が300,500と超えることで、これまでにないような新しい応用分野が切り開けてくる。その一つが「シートコンピュータ」と呼ばれるものだ(シャープは「システム・オン・パネル」、富士通は「システムLCD」などとも呼んでいる)。次のページで、そのインパクトについて見てみよう。



ポリシリコンとは? 低温ポリシリコンのインパクト - システム・オン・パネル