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高分子エレクトロニクス―導電性高分子とその電子光機能素子化
/ コロナ社


導電性高分子のはなし
/ 日本工業新聞社

     最終更新日;2002/10/27
 

  
イントロダクション
有機トランジスタの基礎
プリンタブル集積回路、必要な技術
「ならでは」の応用例
今後の展望&リンク集

 
■有機トランジスタ、プリンタブル集積回路
 − 「ならでは」の応用例

高速化するほど広がる有機トランジスタの応用分野

 何度も繰り返すようだが、一般に有機分子のキャリア移動度はシリコン単結晶と比べてはるかに小さい。しかし、図に示すように、有機分子のキャリア移動度は年々上昇を続けており、すでにアモルファスシリコンの領域にまで達している。

 またキャリア移動度が上昇すれば、トランジスタのスイッチング周波数も向上する。こうして有機トランジスタが高速化すれば、それまでアモルファスシリコンが担ってきた液晶ディスプレイ(LCD)のTFT(thin-film transistor)や、より高速なポリシリコンやシリコン単結晶が担っているLCDのドライバ回路に有機トランジスタを利用することが出来る。

 他にも、高速な有機トランジスタは「RFID(radio-frequency idifiencier)タグ」などに使えると期待されている。RFIDタグもやはり現在はアモルファスシリコンなどの無機物が利用されているが、仮に材料・製造コストが安い合成高分子で代用できるようになれば、はかりしれないほどのインパクトを社会に与えることになるだろう。


すべてのものにチップを - RFIDタグ

 RFIDタグにはバーコードのように製品を一括管理しやすい名札としてのはたらきがあるが、バーコードとの大きな違いはいちいちバーコードリーダーを近づけて読み取る必要がないということだ。つまり、特定のゲートを通過するだけで、RFIDタグの情報が認識される。この身近な例を挙げれば、書店で設置されている万引き防止用の装置がそうだ。CDやテレビゲームのような高価な商品にはこのRFIDタグが取り付けられている。この万引防止という用途はどちらかというと消極的な利用方法だが、RFIDタグにはこんな積極的な利用方法も考えられる。

 例えば、夕飯の支度時間の17,18時のスーパーは客でレジに行列が出来ている。多くの人がこれにうんざりしているだろう。しかし、すべての商品にRFIDタグが取り付けられていれば、カートに商品を入れたままゲートのようなものを通過するだけで精算が終了してしまうという寸法だ。

有機RFIDタグで便利になるショッピングの精算

 現在、無機結晶のRFIDタグが技術的に可能なのに、こういった利用がされていないのは、RFIDタグの材料費や製造コストの問題から、すべての商品にタグをつけていては採算が合わないことがあげられる。誰も100円の缶ジュースに100円のコストがかかるRFIDタグをつけるようなことはしないだろう。しかし有機高分子でRFIDタグが作成できるようになれば、コストは大幅に下げることが出来る。

 なお、すべての商品にタグをつけていては、識別ナンバーが足りなくなってしまうのではないかと心配する人もいるかもしれないが、決してそんなことはない。単純に計算すれば、64bitのRFIDタグなら264(=1.8x1019)個の商品を識別することが出来る。256bitなら2256(=1.2x1077)個の商品を識別することが出来る。おそらくこの数は地球上すべての原子にタグをつけるのに十分なほどだろう。

 現在、安価なRFIDタグの製造を目指して、米国の多数のベンチャー企業が研究開発を行っている。


フレキシブル・ディスプレイはフレキシブルなTFT、ドライバ回路が必要

 有機ELディスプレイ電子ペーパーは、従来のLCDにはないフレキシブルという性質が大きな売りとなっている。確かに特有の表示原理からそれは可能なのだが、これはあくまでフレキシブルなTFT、ドライバ回路が実現したら…の場合である。

電子インクの部分は除くとして、プラスチックフィルタ、ドライバ層など他のすべてが有機高分子から作成されることで、真にフレキシブルなディスプレイが完成する。

 一般に、動画表示ディスプレイのTFTには104Hzのものが必要となり、駆動回路には107Hz程度のものが必要となる。有機トランジスタにとってはこのハードルは決して低くはない。しかし薄膜加工の技術進歩などによって、すべてが有機分子からなるディスプレイが登場するのも夢ではないかもしれない。

 現在では、E Inkと共同研究を行っているベル研などが電子ペーパー向けの有機TFTなどの開発を行っている。





プリンタブル集積回路、必要な技術 今後の展望&リンク集