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ナノエレクトロニクス
更新: 2003/04/04
ナノエレクトロニクス

DNAチップ

お知らせ

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また、このホームページは2003年までのもので、現在は内容的に古くなっている可能性がありますが、あらかじめご了承下さい。

イントロダクション

 「DNAチップ」 の活用によって、医療のあり方が大きく変わるかもしれない。例えば、これまで、患者が医者の診察を受けるとき、自分の症状をどのように伝えていただろうか?気持ちが悪い、寒気がする、走ると息切れがする…、といった感じだろう。こういった情報からだけで、医者が適切な判断を下すのは容易ではない。医療がどれほど進歩しても、患者が医者に症状を正確に伝えられなければ、十分に享受することはできないだろう。しかしDNAチップを使えば、患者の症状を客観的 に医者に伝えることが可能となるのだ。

 ところで、このDNAチップには、ナノテクが深く関わっていることにも注目すべきだろう。というのも、DNAチップの制作には、半導体業界などで培われ てきたトップダウンの微細加工技術が惜しげもなく注ぎ込まれているのだ。他にも、DNAチップの効率化・低コスト化の実現には、インクジェット技術ナノ粒子技術MEMSなど、様々な技術が要求される。そのため、分野を問わず、多くの企業が自前のノウハウを武器にこの産業に参入してきている。

 そこで今回は、DNAチップがどんなものかといった基礎的なことから、ナノテクとの関わりや今後の展開などについて見ていくことにしよう。

DNAチップとは

DNAチップとは、ガラスや半導体の基板の上に特定のDNAを貼り付けたもので、患者の遺伝子群がどのように発現しているかを一度に調べることができる。基本的な流れは、次のようなものだ。
1.患者の細胞や血液からmRNAを取り出す。
2.それから相補性DNA(cDNA)を逆転写・複製する。
3.cDNAを基板にふりかけ、基板上のDNAと対をつくっているかを蛍光体で検出する。
今後のゲノム解析や、患者一人ひとりの体質に合わせて適切な治療を行うテーラーメイド医療にも必須のツールと考えられている。

DNAチップの原理

 患者から対象となるDNAを取り出し、発現パターンを得るまでについて、DNAチップの一般的な流れをみてみよう。なお、DNA分子の基本的な性質については、「DNAコンピュータ/DNA基礎」を参照。

・DNAチップの基礎原理(フラッシュアニメーション)

DNAチップの応用分野

 DNAチップの応用分野は非常に多岐にわたる。例えば、下図に示すように、ガンの症状を診断することができる。活性化している遺伝子はmRNAを多量に生成し、結果としてcDNAも多量に生成されるため、蛍光体の表示が強くあらわれる仕組みになっている。したがって、ガン細胞と周辺の正常な細胞から複製したcDNAに、それぞれ緑と赤の蛍光体をつけ、その蛍光体の表示パターンを調べれば、ガンの進行・移転に関する情報が得られるというわけだ。

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図.DNAチップを使用したガンの進行・転移に関する診断

 また、大規模な患者群からDNAチップの発現パターンを集めて、ある病気や体質に特有なパターンを見つけて、病気の診断や治療に役立てようという試みも ある。これは「発現プロファイル」などと呼ばれ、ポストゲノムの重要な研究テーマの一つとされている。

 その他、遺伝子組換え作物の特定や親子鑑定などにもDNAチップが活躍するとされている。

DNAチップ作成とナノテク

 DNAチップが医療現場で活躍するためには、チップの性能が向上することのほかにも、チップの価格が下がることが重要となる。従来のDNAチップは一枚数万円以上と現場で使用するにはあまりにも高価すぎるからだ。高性能で低コストなDNAチップを作成するためには、マイクロ流体工学コンビナトリアル合成、分子レベルでの操作など、幅広い技術が要求される。そのため、さまざまな分野の企業が自前のノウハウを活用すべくDNAチップ産業に参入している。

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図.DNAチップの構造
DNAチップを作成するのにいかに多くの技術が注ぎ込まれているかが分かるだろう。

DNAチップの基板

 DNAチップの基板の作成には、半導体加工技術が利用されている。半導体業界では、リソグラフィーエッチングによってシリコン基板に電子回路を書き込んでいるが、DNAチップの基板制作でもこの技術が援用されている。

DNA分子の合成・貼り付け

 DNAチップの基板にはサイズの小さなDNA断片が貼り付けられているが、このDNAの用意の方法には主に二種類ある。一つ目は、mRNAから逆転写された相補性DNA(cDNA)で、二つ目は数十字程度の化学合成されたオリゴDNAである。

 これらのDNA断片を基板上にとりつけるには、あらかじめ用意されたDNA断片を一つずつピンの先端で貼り付ける「ピン法」と、基板の上でDNA断片を合成する「オンチップ合成」とがある。また最近では、家庭用プリンタなどでも使用されているインクジェット技術を使用して、より正確な位置にDNA断片を貼り付ける技術も研究されている。

 DNAチップ製造技術(インクジェット技術) – キャノン

DNA分子の検出

 DNAチップの発現パターンを測定するためには、DNA断片に取り付けられた蛍光体をレーザーなどで検出するという方法が一般的である。しかし、この方法では検出器などがおおがかりで高価になるという欠点がある。そこで蛍光体ではなく、対をつくったDNA鎖だけに導電性の分子を結合させて、電気信号として発現パターンを読み取るという手法も研究されている。

 電流検出型DNAチップについて – 東芝

ラボ・オン・チップとは?

ラボ・オン・チップとは

 現時点では、DNAチップの有用性などが認められ、研究開発の基礎段階は終了したといえるだろう。今後は幅広い普及を目指して、高性能・低コストなDNAチップの実現が重要となる。

 今後のDNAチップは、単にマイクロアレイ上の発現パターンを調べるだけではなく、キャピラリー(毛細管)の刻み込まれた一枚のチップ上で、サンプル血液からDNA分子の複製・検出までを行えるようになると思われる。一枚のチップ上で一通りの実験操作を行うという発想は、DNA分析だけに限らず、化学合 成、タンパク質合成の分野でも広く受け入れられつつあり、一般に「ラボ・オン・チップ」とか「ラボチップ」などと呼ばれている。

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ラボオンチップの概念図
DNA分析を行う場合。一枚のチップ上で一通りの操作が行える。

 ラボチップの利点は、サンプルが少量ですむことから、血液を採取するときの患者のストレスを低減できたり、試薬にかかるコストを抑えられるといったことにある。また、サンプルが少量になると反応が速く進むため、検出結果が出るまでの時間も短縮できるとされている。

リンク集

ナノエレクトロニクス.jpから
ICチップができるまで
DNAコンピュータ
自己組織化&自己集合

外部リンク
R&Dリンク
国内

タカラバイオ
テーラーメイド医療用DNAチップ– 東芝
遺伝子解析用DNAチップ -日本ガイシ
繊維型DNAチップ -三菱レイヨン
キャノン
DNAチップ研究所
生体分子計測研究所
海外
Affymetrix
Nanogen
Nanosphere
STMicroelectronics
FRIZ Biochem

関連ニュース
DNAチップ専門情報サイト – 日経BP
テーラーメイドの医療を支えるDNAチップ – Toshiba
DNAチップ – 日経やさしい経済用語の解説

米Intel、ナノテクを医療・バイオテクに応用へ -日経BizTech(2003/2)
東大生研、マイクロ流体チップ開発 -日経BizTech(2003/2)
遺伝子分析を簡単にするDNAチップ製造新技術 – Hotwired(1999/9)