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ますます肩身の狭くなる"惑星"冥王星




---もし冥王星が1930年でなくて1980年に見つかっていたら、間違いなく惑星とは呼ばれなかっただろうというのが学者の一般に言われることです。そんなバカな、と思うかもしれませんが、ある博物館では最近冥王星が太陽系の惑星のリストからはずされました。---


この記事では....
    太陽系の惑星は何個?
    冥王星発見とその後の平坦でない展開
    惑星かどうか?紛糾する議論
    NASAの冥王星探査は切り札となるか?
          という内容を取り扱っています。

 



太陽系の惑星は何個?

 水金地火木土天冥海...。いやいや、今は水金地火木土天海冥だったっけ。子供のころ何度も口にしていたあの言葉も、最近気づいてみると海冥のほうになっちゃっているんですもんね。ご存知のように、冥王星は他の惑星と軌道がずれていて、海王星より内側に来たり外側に来たりするんですよね。それで、今は一番外側にあるわけです。
 
 ところで英語でも日本語と同じように惑星の順番を覚えるのに便利なものがあって、それはこういう文章です。
 "My Very Educated Mother Just Served Us Nine Pizzas."
 -とても教養のある私のママは、私たちにピザ9枚を出してくれました。
 お気づきのとおり、それぞれの単語の頭文字が順番に惑星に対応していて、Mercury Venus Earth Mars Jupiter Saturn Uranus Neptune Plutoというわけです。

 でも、もし、最後の"Pizzas"が無くなってしまったら大変です。とても教養のある私のママが何も出してくれなかったことになってしまいます!

 しかし実は、これはもう「もし」ではなかったりもするのです。ニューヨークタイムズに、アトランタのローズ・センターで、冥王星が太陽系の惑星のリストからはずされたとありました。

 日本語だって、やっと海冥と覚え直したのに、今度は海で終わってしまったら、それもまたリズムが悪い。実に困ります。

 実はここ十数年で、「冥王星は惑星ではないのでは?」という声が高まっているのです。そんなことを急に言われても何でと問い直したくなりますが、その原因は冥王星が他の惑星と比べて実にユニークだということにあるのです。星の性質もユニークなのですが、その発見されてからの歴史も実に面白いものとなっているのです。



冥王星発見とその後の平坦でない展開

 実はこの冥王星、発見されたのもガリレオが生きていたようなそんな昔のことではなくて、実に最近、1930年の2月にクライド・W・トンボという人によって発見されました。当時の学者はその星が地球くらいの大きさがあると推測しており、それを疑いもなく惑星だとしました。また、当時はアメリカの天文学の黄金時代ともいわれ、この惑星の発見で実にアメリカ国内がわきました。ところで、冥王星は英語でプルートーというのですがどこかで聞いたことありません、この名前?そう、ディズニーのミッキ−に登場してくるあのイヌの名前がプルートーでしたよね。その名前は当時話題となったこの冥王星の名前からとったものだそうです。

 しかし、このプルートー熱も長くは続きませんでした。はじめは地球ほどの大きさがあると推測されていた冥王星ですが、観察がされるたびにもっと小さいことがわかり、どんどんと小さなものに訂正されていきました。星の大きさが順調に(?)小さなものへと訂正されていきましたので、当時はこのままのペースで訂正されていったら、1990年ごろには冥王星はなくなってしまうとまで言われたものでした。

 そして、最終的な大きさは、なんと地球を回っているあの月よりも小さなものとなってしまいました。

 そうです、この冥王星、皆さんも太陽系の惑星で一番小さいということは知っていたと思いますが、実は地球の惑星の月よりも小さいのです。大きさの面から考えても、この星は他の惑星と比べて実にユニークだというわけです。

 他にも、ユニークな点はたくさんあります。最も有名なのが他の惑星と比べてずれた公転軌道です。水金地火が固体の惑星なら木土天海は気体の惑星、では冥王星はと言うと、ガスが凍って固まったできた塊なのです。ですから、ふだんは表面に大気はなく、太陽に近づいたときだけその氷が溶け大気となるというのです。このような変わった性格のために、一時期は海王星の衛星だったものがなんらかの原因で飛び出し今のようになってしまったのではとも考えられていました。これについては、冥王星がカローンという衛星を持っていたことからあまり最近では聞かれない論になってしまいましたが。ところがまた、このカローンという衛星は、冥王星の大きさから考えると、なんとも似つかわしくないほど大きな衛星なのです。その不釣合いな関係を見て、惑星とその衛星とは捉えずに、まるでタンゴのダンスを踊っているようだなどと表現する学者もいるくらいなのです。

 そして、さらに冥王星の立場を悪くすることに、太陽系の起源の解明にも貢献するといわれるクワイパー・ベルト(Kuiper Belt)というものが発見されました。これは冥王星のさらに外側に存在する氷などが集まった円盤状のものなのですが、そこには冥王星クラスの大きさのものも存在すると考えられ、もともとはそこにあったカ、もしくはその一部ではないのかという考え方もでてきているのです。

 このようにして、もし冥王星が1930年でなくて1980年に見つかっていたら、間違いなく惑星とは呼ばれなかっただろうというのが一般に言われることです。


惑星かどうか?紛糾する議論

 ところが、このようにいろいろと言われつづけながらも、この冥王星は基本的には惑星というもので捉えられています。ところがそれも学者が全会一致で同意したわけではなく、あまりにもいろいろな説がありすぎてまとまらず、とりあえず惑星としておくといった感じなのです。

 ところで、惑星などといった名称を決めるのはThe International Astronomical Union (IAU)という団体なのですが、惑星についてはしっかりとした定義をしていないというのがこのように議論がやまない原因ともなっているのです。さて、その紛糾ぶりも見ていてなんだかおかしく思えてきてしまうものが多いのでが、いくつか紹介してみましょう。

 まず、ひとつは惑星の定義をしようというもの。直径が1000kmのものは惑星としようというのです。ちなみにこの1000kmというもの、きりがよく見えるのですが、実はあまりに恣意的なものだといわざるをえません。冥王星の直径は1150kmで、冥王星と性質が実に似ているといわれる小惑星のセレス(Ceres)はこれには満たない。つまり、今までの名称が変わらないようにラインを引いたに過ぎないのです。そういうわけで、やはりこれは猛反対に合い頓挫しました。

 では、次に二重の名称を与えるというもの。つまり、今までのように惑星という地位も認めるが、これからは小惑星としても認めるというものです。これは、先ほどの意見と比べれば、広く承認を受け、今でも大筋はこのようにきています。もっとも、IAUは、これにも猛反対をし、冥王星は惑星なのだと言い張っていますが。私たちのような外部者にとっては、なぜそこまで名前ごときにこだわるのだろうと、不思議に見えるかもしれませんが、学者にとっては、惑星などといった名前はその星の誕生を、しいてはこの太陽系の誕生までにも影響を及ぼすといってここまでこだわっているのです。



NASAの冥王星探査は切り札となるか?

 最後に、この問題の決着をつける大きなカードであったNASAの冥王星探査について触れておきましょう。この探査は直接冥王星へ降り立つため、この星についてハッキリした情報が手に入り、この論争に終止符をうつものだとして期待されていました。当初はこの探査が2004年に始まるとされていたのですが、最近のNASAの「小規模、安く、早く」といういかにも今らしい方針のため、2004年に実行できるという見込みが実に弱くなってきました。しかも、運の悪いことに、ご存知のように今冥王星はその独自の軌道に乗って、太陽からどんどんと離れていっています。そのため技術的な面で、もし2004年から大幅に遅れると冥王星へたどり着くことができず、また近くまで戻ってくるのを待たねばならず、それには20年ほどかかるといわれています。淡い期待を抱きつつ、今後のNASAの動きを見ていこうと思います。

 さて、結局今でも冥王星をどのように呼ぶかというのは正式には決定していません。あなたの家のそばの博物館はどうでしょう。今度行ったとき、冥王星は惑星だと断言してあるか、それとも実は惑星ではないのだと書いてあるか(たぶん書いてないと思いますが)確かめてみてはどうでしょうか。おそらく、惑星だともでないとも書いてないのではないでしょうか。

 それにしても、「惑星」って言葉を眺めてみると、まさに冥王星のためにあるようなものだと思いません?そんな言葉遊びをしているのは私だけでしょうか。





注:惑星の名前などをカタカナ表記しましたが、それは英語の発音を直接カタカナにしたもので、一般的に呼ばれている名称と多少異なるかもしれません。その点をご了承ください。




 関連サイト

Planetarium Takes Pluto Off Planet A-List
    NewYorkTimesの記事から。2001/1/22。英語。記事を見るためには登録が必要ですが無料です。
   なお、このサイトには3Dモデルを使って、太陽系の惑星の大きさを1対1で比較できる企画があります。1/5という数字を見るより目で見てみろってことですね。確かに、冥王星は小さかった。
A Ball of Frozen Gases
    FAZ.NETにPhil Plait氏が寄稿したもの。英語。
Pluto and Charon
    Nine Planetから。
Pluto


    
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