このサイトは現在、サイエンス・グラフィックス(株)が管理しています。
お問合せはこちらまで。
 

トップページ星の泡を吹き出す誕生
気になる科学ニュース調査

Contents
トップページ
バックナンバー
コラム投票
メルマガ登録

Service
私の気になる科学ニュース
科学ニュースヘッドライン(英語)

Information
サイトについて
掲示板
フィードバック


気ニナる
星の泡を吹き出す誕生



---太陽系からはるか彼方の宇宙で生まれた星の奇妙な行動に、多くの科学者が注目しています。この発見は、今まで信じられてきた星の誕生について見直す必要があるかもしれないという点でも興味深いのですが、他にも注目すべきことがあります。それは、星の誕生というような大きな出来事が、人の寿命くらいのわずかなあいだにおこっているということです。もしかすると宇宙というのは、今まで考えられてきたようなゆっくりと変化していくものではなくて、もっとダイナミックなものなのかもしれません。---



この記事では
   星の奇妙な誕生
   はるか彼方の出来事
   未知への遭遇の可能性
     という内容で構成しています。
 


星の奇妙な誕生

太陽系からおよそ2000光年もはなれたような遠い宇宙で、最近生まれたばかりの赤ん坊の恒星の奇妙な行動が観測され、この発見に対して天文学者たちが少し戸惑いを見せています。

というのも、この恒星は、今まで信じられてきた恒星の誕生とずいぶん違った方法で生まれてきたのです。ひょっとすると、この恒星のおかげで、今まで考えられてきた恒星の誕生の仕方について、もう一度考え直してみないといけなくなるかもしれません。

今まで恒星というのは、ちょうどコマの軸のようにガスを吹き出す段階をへて誕生してくると考えられてきたのですが、今回観測された変わり者の恒星は、その代わりに泡が膨らんでいくようにガスを吹き出す段階をへて誕生してきたのです。



そもそも、星の誕生というのは、まずはじめに宇宙空間に漂っているガス雲が、自分の重力によって収縮していくことで始まります。そして、それまで冷え切っていたガスが圧縮されて高温になり、じょじょに渦を巻きながら円盤状の形へとなっていきます。さらに回転は速くなり、どんどんと周りのガス雲を内側へと引き込んでいきます。こうして内部でエネルギーがたまりにたまり、ついにガスが激しく吹き出されるのです。
(一見は百聞にしかずということで、下にムービーを紹介しています。)

今までは、この円盤状のガスの中心の両極からガスが吹き出されると考えられていました。それに実際に星の誕生について観測されていたのは、このようなものだけでした。

ところが、今回観察されたのは、ガスが泡のように丸く膨らんでいくようなかたちで吹き出されるのが観測されたというわけです。



はるか彼方の出来事

この泡を吹き出すような珍しい星の誕生の仕方はスペインの研究チームによって発見されました。この観測チームによると、この泡は太陽系が簡単にすっぽりとおさまってしまうほどの大きさだと報告されています。

さらに詳しい観測の結果、この泡の膨張の速度は毎秒9キロメートルくらいだと分かりました。

ところで、先ほどの2000光年という距離に対して、毎秒9キロメートルの膨張速度というのは、いくらなんでも桁が違いすぎるように思えるかもしれません。これではまるで、東京タワーから北京の柳の葉が揺れているのを確認するようなものか、もっと難しい観察です。

このようにはるか彼方の宇宙で起こっている、わずかな動き(もちろん、宇宙のスケールに対してですが・・・)を詳しく観察するには、非常に精度の高い観測機が必要になります。そこで精度の高い望遠鏡を作るには、レンズのサイズを大きくすればいいわけですが、これではコストと技術的な面で大きな問題が出てきてしまいます。

そこで、発想をかえて、いくつかの望遠鏡で観測されたものを重ね合わせることで精度をあげることを考えればよいわけです。今回の恒星の誕生を観測した方法も、まさにこれを利用したもなのです。アメリカ本土やハワイなどに散らばる10台の電波望遠鏡を利用したVLBA(Very Long Baseline Array)によって観測されました。そのため、宇宙のはるか彼方で起こっているような出来事を詳しく観察することができたのです。

そして、この泡の大きさと膨張の速度がわかったため、この泡は約33年ほど前に吹き出されたということも分かりました。もっとも、今私たちの目に見えているのは2000光年昔のものなので、正確には2000光年と33年前に、この泡が吹き出されたというべきかも知れませんね。




未知への遭遇の可能性

ところで、先ほどの距離の桁の違いも興味深いところですが、宇宙の非常に大きなながれのなかで、たった33年という期間も注目すべきことでしょう。

というのも、宇宙の変化というものは、一般的に大変時間がかかるものだという常識がありますが、太陽系をすっぽり包み込む大きな泡が吹き出されるという出来事が、実は人の時間感覚で測れるようなわずかな時間で起きていたのです。

つまり、星の誕生などといった宇宙での大きな出来事も、ゆっくりとした時間をかけて行われるものとは限らずに、私たちでも十分その変化を観測できるほどダイナミックに変化するものだといえるわけです。


また、これは同時に、宇宙での出来事一つ一つをとらえるチャンスがが、いかに少ないかということの裏返しともいえます。そのために、今回のような泡吹きの星の誕生をこれまで観測することができなかったのは、ただチャンスに恵まれていなかっただけなのかもしれません。今回の発見は珍しいことではなくて、宇宙のいたるところで起こっていることなのかもしれません。

そして、さらに珍しい星の誕生の仕方も、私たちに観測されるのを待っているのかもしれません。

今回の星の泡吹きは、これまでの星の誕生についての概念をすぐに覆すものになるというわけではありませんが、今後も詳しい観測が必要でしょう。


それにしても、この宇宙の大きな時間のスケールに対して、私たち人間の寿命程度の時間のスケールで、大きな出来事が起こっているのだということを考えると、宇宙での大きな出来事を気づかずに見逃しているかということを再度気づかせてくれます。

私たちが宇宙をどれほど観測しても、宇宙が私たちをひきつけてやまないのは、今回のような、まだ知ることのない出来事との遭遇の可能性に満ち溢れているからなのかもしれませんね。



             


関連サイト
今回の内容について、一般のニュースサイトなどから。

星のげっぷ? 太陽系大の「宇宙泡」を発見 - CNN日本版

Young star blows baffling bubble - nature science update(英語)
泡が吹き出している様子のイメージがあります。

巨大原始星のスペクトル放射を世界ではじめて検出 - アストロアーツ
今まで一般的に考えられていた星の誕生の仕方について。

星の誕生のムービー - ハッブル・サイト(英語)
ここでは、今まで考えられていた星の誕生(から最期まで)のムービーが見られます。確かにコマの軸のようにガスを出しているでしょ。


今回の報告は、nature上で発表されました。どのような方法で星を観察したのかといったことを詳しく知りたい方はこちらのページを参考にしてください。ただし読むのには会員登録が必要になりますが。
Nature(英語)
  ・Astrophysics: A stellar performance
   vol 411, 251-252 (17 May 2001)
  ・Spherical episodic ejection of material from a young star
   vol 411, p277-280 (17 May 2001)


     

もちろん他にもいろんな科学コラムがあります。
ぜひ、そちらもよんでください。
バックナンバー紹介を見てください。