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エジプトのピラミッドと同時期の南米の都市


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---ペルーの内陸部の遺跡が、エジプトのピラミッドと同時期の都市のものだということが分かりました。もちろん、これがアメリカ大陸の最古の都市ということになります。ところが、この都市はただ古いものだというだけではなく、今までの一般的な考え方にいろいろと疑問を投げかけるものなのです。---



この記事では
   一目で気になる科学ニュース
   アメリカ大陸最古の都市
   忘れ去られた土地
   複雑な社会、素朴な技術
   膨らむ期待
     という内容で構成しています。
 


一目で気になる科学ニュース

 何気なく英文の科学ニュース記事を読んでいると、「アメリカ大陸最古の都市」、「エジプトのピラミッドと同時期」といった意味の言葉が、ぱっと目に飛び込んできました。どうも無意識のうちに、こういった言葉に目がいってしまうようです。このキーワードを見るだけで、その内容が気になって仕方ありません。

 そこで、考古学的な発見は、どのようなときに私たち一般の人の関心を多く引きつけるのかということを考えてみると、1.「とにかく古い」、2.「今までの概念を覆す」という条件がそろっている必要があるように思えます。

 では今回の発見はどうなのでしょうか。キーワードから分かるように、とにかく古いという条件は満たしています。それに、もう1つのほうの今までの概念を覆すという条件も満たしているのです。つまり、今回の内容は大事な二つの条件がそろっているのです。

 それでは、気になって仕方ないこの発見が、具体的にはどれだけ古くて、どのように今までの概念を覆すような発見なのかを見てみましょう。



アメリカ大陸最古の都市

 問題の発見は、ペルーの内陸部でおきました。リマから北へ約200キロメートルいったところに、カラル(Caral)という土地があります。この風が吹きっさらしの砂漠で、約4600年前の都市が発見されたというのです。(地図: http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A10918-2001Apr27.html /ワシントンポスト)

 つまり、紀元前2600年ごろの都市ということになります。これは、だいたいエジプトのピラミッドが作られていたときと同じくらいの時期なのです。

 アメリカ大陸で今までいちばん古いと考えられていた都市は、メキシコにあるオルメクというところなのですが、これは紀元前1200年くらいのころのものだと考えられています。もっとも、今のペルーに人が住みはじめたのは紀元前一万年くらいだと考えられているのですが、やはり都市というものが作られるようになったのは、このようにずっと後のことだと考えられていたのです。

 しかし、今回の発見は、今までのものと比べて一度に1600年もさかのぼることになってしまったわけです。このように驚くべき年代測定ができたのも、放射性炭素による年代測定のおかげです。今回の場合は、遺跡から出土したワラ袋の炭素年代測定が行われました。



忘れ去られた土地

 ところで、この都市は、何も最近になって掘り出されたものではありません。むしろ、発掘されてから、ずいぶん長い間が経っているのです。なぜ、この土地は、それほど長くの間忘れ去られてしまうことになったのでしょうか。


 いちばん初めにこの都市跡が発見されたのは、1905年までさかのぼります。マックス・ウハルという考古学者によってずいぶん昔に発見されていたのです。このころの考古学者は、この跡を何かの遺跡だろうと考えていたのですが、陶器が見つからなかったため、じきに関心が他のところへうつっていってしまったのです。

 陶器が見つからないというのは、確かにこのカラルの土地が古いということを示していて、具体的には紀元前1800年程度だと考えることができるのですが、誰もこの場所がそんなに古いものだとは考えてもいなかったのです。というのも、今回の都市ほど大規模のものが、そんなに古い時代のものはずがなく、もっと新しい時代のものに違いないと考えていたからです。

 そういうわけで、今回の年代測定で、再びこの土地の真実が明かされるまで、ほとんどの考古学者がここを忘れ去ってしまっていたのです。


 なお、考古学者のあいだで、カラルはもっと新しい時代の遺跡だという了解が出来上がってしまっていたのには、それなりの理由がありました。

 今回の再発見のまえに、ペルーでは、もっと海に近い土地で文明が形成されていることが知られていました。この海岸沿いの文明と、のちのち登場するアンデスの山々の文化とは独立して別々に生まれてきたものだと考えられていたのです。この沿岸部と内陸部の関係についての考え方は、今から30年程前に、マイケル・モースリーと呼ばれる考古学者によって提唱されたものでした。そのため、今回の発見は、この考えのなかにはおさまらない別次元のものだと考えるべきなのでしょう。



複雑な社会、素朴な技術

 さて、とにかくこのカラルと呼ばれる土地が古いということは分かりました。しかし、それ以上に驚くべきことは、今までの概念におさまりきらない特徴が多いということでしょう。



 この都市の規模についてですが、64万平方メートルの面積のなか、大きなピラミッドが6つ存在しており、それが取り囲むかたちで、中央に広場のようなものが存在していました。また、そのピラミッドのほかにも、ずっと小さなピラミッドがいくつか存在し、たくさんの粘土作りの家が存在していました。ピラミッドの高さは大きいもので18メートルほどだと考えられています。(都市のイメージ図: http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A10918-2001Apr27.html /ワシントンポスト)


 また、この都市のそばには大きな川が流れていて、都市に水を引いた跡が見つかっているのですが、アンデスの主食として代表されるようなトウモロコシ、ジャガイモといったものが栽培されていた形跡がないのです。綿や豆を栽培していた跡はあるのですが、これほどの大きな都市をいったいどのようにして養っていたのでしょうか。

 その答えは、この都市が担っていた役割に焦点を当てることで見えてきます。

 この都市からは、貝殻やアンチョビの骨などが見つかっています。しかし、この土地は海岸から何十キロも離れた内陸にあるのです。

 つまり、海岸沿いの集落と緊密な貿易関係が出来上がっていたのです。カラルで栽培された綿などの植物から、網などを作り、その網を魚介類と交換し、その網は漁に使われるといった具合です。ちょっと言い方をかえれば、沿岸部ではタンパク質を多く供給し、内陸部では多く炭水化物を供給していたといえます。

 これほど古い時期では考えにくいことですが、この都市を中心として、かなり複雑な社会が形成されていたのではないかと考えられるわけです。海岸沿いの地域が当時の社会の中心的な存在を果たしていたという今までの考えを、明らかに覆すものなのです。

 また、ピラミッドのような大きい建造物や水路を作るには、エジプトでも中国でもそうであるように、はっきりとした階級が必要になります。そのため、この都市はかなり高度に組織されたものだったといえるのです。

 もちろんこの時代は、アメリカ大陸のほかの土地では、小さな集落で、狩や採集をしていたようなころです。それを考えると、このカラルの都市が、どれほど異様なまでに進んだものかが分かりますよね。


 しかし、このような複雑な社会が形成されながらも、陶器といった高度な技術を要するものは見つかっておらず、道具などは非常に素朴なものが多いのです。このように、技術面と社会の統制の面でのギャップの異様さが。他の文明とは大きく異なっているのです。

 これは個人的な疑問なのですが、豆や貝などの食糧を、煮るような陶器もなしにどのように調理していたのでしょうか。ささいなところからも、大きな疑問がわきあがってきますよね。私たちがまったく想像できない方法だったのかもしれません。



膨らむ期待

 なぜこのような昔に、周りの中心的な役割を果たす都市が、内陸の砂漠のような土地で形成されたかということは、今でも謎に包まれています。それに、どうしてこの都市が廃れていったのかもこれからの研究を待つしかありません。

 しかし、今まで考えられてきた南米の文明の形成がどのようになされてきたということを大きく覆すような衝撃的な発見だったのです。今回の発見は、単にアメリカ大陸最古の都市というだけにとどまらず、謎の多いこの新大陸の文明の形成に大きな進展をもたらすものなのかもしれません。



             

関連コラム
以前私の書いた関連コラムです
 ・ヒトの進化の歴史を変える頭蓋骨
 人の進化に関する発見の場合は、先ほどの二つの条件に加えてもう1つ、私たちの祖先かもしれないという条件が満たしていれば、よりいっそう私たちの興味を引くものでしょうね。もちろんこの記事はその三つの条件を満たしています。


関連サイト
今回は英語のサイトが中心です。

 ・カラル遺跡 アメリカ大陸最古の都市文明と判明 - 毎日新聞(ヤフーニュース)
  日本語のニュースで私が見つけられた唯一の記事。簡潔な解説に感動(- -;


 ・ワシントンポスト (英語)
  ・Peru May Harbor Americas' First City
  ・上の記事の関連資料
   なぜか、妙にワシントンポストが今回の内容を取り上げていました。とりあえず図などの関連資料は見ておきたいです。ちなみに、今回の内容は記事によって微妙に内容が一致しないものがありました。

 ・サイエンス (英語)
・Dating Caral, a Preceramic Site in the Supe Valley on the Central Coast of Peru (Article)
  vol292 p723
  今回の発見をした研究グループの報告。

 ・ペルーの歴史(英語) - Britanica
 今回の内容には直接関係ありませんが、ペルーの歴史が詳しく書かれています。ペルーの歴史に興味を持ったらどうぞ。

       

 


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