■液晶ディスプレイ、LCD
- 今後の展望
ポストCRT競争と「付加価値」化
視野範囲の広域化、ディスプレイの大型化、レスポンス速度の向上など、液晶ディスプレイは技術蓄積によって確実に進化してきた。電気屋では30インチ程度の液晶テレビが一番目立つところに置かれているほどだ。
ところが、現在、そんな液晶ディスプレイは大きな岐路に立たされている。電気屋の店頭では必ず「プラズマテレビ(PDP)」が液晶テレビとともに肩を並べている状況を思い出してほしい。「ポストCRT戦争」という言葉もあるように、液晶だけが21世紀のディスプレイというわけではないのだ。
プラズマディスプレイ(PDP)は大型テレビとして、最近は価格もずいぶん現実的なものとなっている。PDPとLCDは比較して、その性格上、それぞれ別の用途に向いているといえそうなので(詳しくは「プラズマディスプレイ」を参照)、直接競合することはないかもしれない。
液晶の将来の雲行きを怪しくしているのは、もう一つの有力候補である「有機ELディスプレイ」の存在だ。有機ELディスプレイは電流を流すと光る自発光型のディスプレイだ。(詳しくは「有機ELディスプレイ」を参照。)少なくとも有機EL開発に携わるメーカーの主張では、ポテンシャル、使いやすさ、コスト面などいくつもの点で、LCDを凌いでいる。日本は液晶技術が世界的に見ても優れているため、LCDの展望を疑う見方はあまりないが、有機ELディスプレイの研究開発を本格的に行っている欧米では、有機ELの可能性を強調する見方が多く見られる。
そういう事情もあってか、最近では、液晶ディスプレイの付加価値を高めようとする動きが広く見られるようになってきた。とくに開発サイクルの回転の速い携帯電話用ディスプレイ市場ではその動きが顕著だ。そこでは、さまざまな付加価値を備えた液晶ディスプレイが登場しているが、とくに注目すべき技術は3D液晶だろう。3D液晶技術とは、ヒトが視差を利用して遠近感を判断しているのを利用して、平面画面上に映像が飛び出して見えるようにする技術のことだ。その原理については、下図で簡単に紹介している。もちろん、この種の立体映像は液晶ディスプレイに限られたものではないが、数あるディスプレイのなかで、技術的に最も成熟した液晶ディスプレイにこそ適したものなのだろう。他のディスプレイとの競争が激しくなるなか、今後は「付加価値」が液晶ディスプレイの活路になっていくのかもしれない。
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上図:3D液晶技術を理解するために
- その1 なぜ立体的に見えるのか?ヒトの視差による説明 |
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上図:3D液晶ディスプレイを理解するために
- その2 ヒトの視差を利用して、平面画像を立体的に見せる。 |
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上図:3D液晶ディスプレイの原理 |
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