この「ナノエレクトロニクス」のホームページは、現在、サイエンス・グラフィックス(株)が管理しています。すべてのお問合せはこちらにお願いします。また、このホームページは2003年までのもので、現在は内容的に古くなっている可能性がありますが、あらかじめご了承下さい。

ナノテクノロジーの入門サイト。CGを駆使して解説。書籍紹介、R&Dリンク集など。





Semiconducting Polymers: Chemistry, Physics, and Engineering
/John Wiely & Sons


高分子エレクトロニクス―導電性高分子とその電子光機能素子化
/ コロナ社


導電性高分子のはなし
/ 日本工業新聞社



 

  
イントロダクション
導電性は何に由来する?
キャリア移動度-π共役構造
キャリア濃度-ドーピングでキャリアを注入
応用例1;バックアップ電池、機能性コンデンサ
応用例2;有機EL、高分子LED
応用例3;有機トランジスタ、プリンタブル回路

リンク集

 
導電性高分子
 - 応用例1;バックアップ電池機能性コンデンサ

●ポリアセン/PAS電池
 ポリアセン系半導体(PAS;PolyAcenic Semiconductive material)は、フェノール系樹脂を熱処理して得られる物質である。

 ポリアセチレンなど他の導電性高分子と同様に、PASもp/nドーピングによって導電率が上昇し、また脱ドーピングも可能である。さらに、PASは空気中でも比較的安定である。また、上図に示すような分子構造を基本としているが、実際はそのようなきれいな骨格をもっているわけではなく、グラファイトのようにグラフェンシートが積み重なったような非結晶構造をとっている。そのため、三次元的に隙間が多く、大量のイオンをとり込むことが可能である。

 以上のような性質から、PASはかなり以前から2次電池などへの応用が試みられてきた。今では、携帯電話やさまざまなモバイル機器のバックアップ用として、PAS電池は広く普及している。多少地味な感じはあるが、導電性高分子で最も経済効果の大きい応用分野の一つである。

 上図に示すキャパシタタイプのPAS電池では正負両極にPASが使われており、電解液中のイオンでPASのドーピング、脱ドーピングが行なわれ、これによって充放電が行なわれるという仕組みになっている。

 さらに最近では、リチウムイオン電池の次をになう高エネルギー電池として、高性能PAS電池(リチウムイオンタイプ)の開発が進んでいる。


モバイル時代にシェア拡大。世界初のオールポリマー電池。 - カネボウ
ポリアセンキャパシタ - カネボウ


●ポリピロール/高機性コンデンサ

 近年、情報処理のデジタル化や高周波数化、モバイル情報機器の爆発的な普及を背景に、小型軽量で大きな容量をもち、かつ高い周波数に対応できるコンデンサが要求されるようになってきた。この2つの要求に答えるものとして、ポリピロールなどの導電性高分子を電解質とする機能性高分子コンデンサが登場した。

 コンデンサの基本的な構造は、二枚の向かい合った電極に誘電体がサンドイッチされたものとなっている。この誘電体の誘電率が高いほど、そして面積が広く薄いほど大容量コンデンサが可能になる。ところが従来のコンデンサの電解質には半導体MnO
2(二酸化マンガン)が使われており、基本的に誘電率は10-2〜10-1S/cmmと小さく、コンデンサの内部抵抗が大きかった。とくに大容量を得るために表面積を増すほど内部抵抗は大きくなるという問題があった。

 そこでコンデンサの電解質に、誘電率の高い(10〜100S/cm)ポリピロールを用いることでコンデンサの内部抵抗を小さくすることが可能になった。結果として従来より2桁近い高周波数領域に対応できるコンデンサが実現するようになった。こうして高周波の信号やノイズに応答できるようになったことで、機能性高分子コンデンサはパソコンや携帯電話などの最先端機器に搭載されている。機能性高分子コンデンサも、PAS電池同様にやや地味な応用例ながら、現在の情報化社会において一定の役割を果たしている。


導電性高分子系チップタンタル(Ta)コンデンサ - NEC Tokin



キャリア濃度-ドーピングでキャリアを注入 応用例2;有機EL、高分子LED